シンガーソングライターの小林しのさんが、この季節に何度も味わいたくなるEPを配信リリースされました。気心の知れたメンバーと練りに練った楽曲たちの美しさといったら!寒い夜に温かい飲み物を飲みながら聴くのにぴったりです。
3曲に込めた想いやエピソード、そして音楽についての想いまでたっぷり伺いました。
また、今回とても綺麗なジャケットを描かれた薮内貴広さんから、ジャケットにまつわるコメントを頂き、レイアウトにラフ画を使わせて頂きました。
さらに、アルバム参加者の皆さんからコメントを頂きました。ぜひゆっくりお読み頂ければと思います。(2021年1月)

小林しの インタビュー コメント 


---今回のEPを制作することになった経緯、きっかけなどについて教えて頂けますか?

小林:「うさぎのウシャンカ」と「星の色に似た海」は、当初2018年に発売した「Havfruen nat」で一緒に収録したいと思っていたんです。最終的には7インチレコードにしたので収録できなかったんですが、ササキアツシさんがその頃から楽曲制作に取り掛かってくださっていたので早めに発表したいと思っていました。
そしてアルバム制作のため高口大輔さんと制作中だった「小さな夜」も完成間近だったため、冬の3曲としてEPで2020年内に配信リリースすることになりました。

---この状況下でレコーディングは大変だったのではないでしょうか。レコーディングの様子など教えて頂けますか?

小林:「うさぎのウシャンカ」「星の色に似た海」はササキさんが、「小さな夜」は高口さんがそれぞれ音を作ってくださったので、実際スタジオで集まったのは歌のレコーディングの時だけでした。
10月〜11月頃で、感染状況もすこし落ち着いていた頃に一緒にレコーディングしました。久しぶりに皆さんにお会いできてすごく嬉しかったです。

今回はどの曲も歌うのが難しくて、レコーディングや編集にすごく時間をかけていただきました。歌うのも大変でしたが、レコーディングしてくださった皆さんはもっと大変だったと思います。

---ジャケットがとても美しいですね。このEPの世界にぴったりです。絵を描かれた薮内貴広さんはどんな方なのかご紹介お願いします。依頼することになった経緯についても伺いたいです。

小林:薮内さんのイラストの世界観がすごく好きで数年前からTwitterでフォローさせていただいていました。その後、薮内さんが私のアルバム「Looking for a key」を聴いてDMをくださったことがきっかけで時々やりとりをさせていただくようになりました。

藪内さんの絵が好きだったことや、ジル・バークレムなど好きな世界観が似ている部分があったのでいつか絵を描いていただけたらと思っており、今回思いきってジャケットを描いていただけないか連絡をさせていただいたところ、引き受けてくださってとても嬉しかったです。 ラフの段階から可愛いイラストを描いていただけて完成を楽しみにしておりましたが、出来上がったイラストの淡い美しい色合いや花や動物たち、雪景色にとても感激しました。




【薮内貴広さんからいただいたコメント】

「もみの木のクリスマス」というお題をしのさんにいただいてましたので、当初は寒色系の絵を考えていました。
その後、ピンクが基調になったのは「うさぎのウシャンカ」を聴かせていただいてからです。デモの段階でキラキラと幸せな世界観でしたし、しのさんの歌声の華やかさもあって、幸せなイメージの色や花などをザザッと色鉛筆で描きました。最初のラフがそれです。「ウシャンカ」が帽子のことなのも良くわからず、人物なんかも描いてますね。

曲の持っている上品な静謐さとピンク基調とのバランスが少し心配だったのは「星の色に似た海」でした。公開されていたデモがすごく好きでしたので悩んだんですけど、しのさんが「薮内さんの絵は上品さと可愛さ、どちらも兼ね備えている」とお言葉かけてくださって、すごく助けられました。 「小さな夜」は絵にぴったりだったので、嬉しかったです。イラストも出来上がる直前に聴かせて頂いたんですけど、イメージが膨らんで花をたくさん描き足したのを覚えています。

リリース直前に「うさぎのウシャンカ」の作詞作曲をされたササキさんが「雪が降り積もる中、子供達が無邪気にソリを滑らせるという物語です」と、ラジオでおしゃっていて、私は「大人の幼馴染みカップルが遊んでいるイメージ」だったので、描かなくてよかった…と、ヒヤりとしました。「うさぎのウシャンカ君」が主役だと思っていた時期もあったので(笑)あとでササキさんには「歌詞は聴いた人それぞれが心の中に作り上げた物語が其々正解なんだと思います。」というお言葉をいただきました。

普段、私は、見た人が概ね同じ感想を抱くように作る事が正しいとされる漫画やアニメといった大衆芸能の世界にいるので、すごく新鮮な事でしたし、何より楽しかったです。

薮内貴広 Twitter
https://twitter.com/Shizuka_ni





---タイトル『Cold And Warm Winter』に込めた想いはいかがですか。

小林:タイトルは決めてなかったんですが、薮内さんの描いてくださったラフ絵を観ていると冬なのに温かなイメージが思い浮かび「Cold And Warm Winter」というタイトルをつけることになりました。

相反するイメージを両方持っているものに惹かれるので、冷たさも温かさも感じてもらえるような作品になっていたら嬉しいなと思っています。

---ここからは1曲ずつお伺いします。

◆「うさぎのウシャンカ」
---ササキアツシさん(ポプリ、ex.melting holidays)が作った楽曲なのですね。優しくあったかく、しのさんの創り上げる世界にマッチしていて、寒い夜に何度も聴きたくなります。いつもながらにサウンドが綺麗です。
この歌を歌うことになった経緯は?


小林:この曲はササキさんからご提案いただいて歌うことになりました。最初のデモはササキさんが歌ってたのですが、柔らかな歌声と美しいハーモニーに感動し、"是非お願いします"となりました。

「うさぎのウシャンカ」はうさぎの名前だと思ってましたが、歌詞を書かれた佐々木さんによるとロシア帽のことなんだそうです。
私は昔4匹のうさぎと暮らしていたことがあるので少し切なくなりましたが、寒さが厳しい地域で暮らす、凍てつくような冬の国のお話なんだなと理解しました。そんな遠い国の景色が目に浮かぶような、絵本のような世界観の歌詞も素敵です。

ササキさんの曲を聴いているといつも嬉しさと寂しさを行き来するような切ない気持ちになります。
今回も重ねた旋律やコーラスや最後の雪をふみしめるギュッギュッという音まで繊細です。
ギターは、以前Melting Holidaysにいらして、最近はポプリでササキさんのサポートをされているタサカキミアキさんが弾いてくださり、ギターソロも聴きどころです。

◆「小さな夜」
---作詞作曲とも、しのさんですね。想像がふくらむ歌詞ですが、どのような想いで作った曲でしょうか?
編曲や演奏はお馴染みの高口大輔さん。高口さんとどのようにこの曲の世界を創っていかれましたか?


小林:この曲は10年以上前に作った曲で「月、星、風、花」という自然のモチーフと個人的な心の動きを重ねて作った曲です。
3年くらい前に一度別バージョンを高口さんが編曲してくれて、ライブ特典としてお配りしたことがありました。
その時は繰り返す4編の歌詞でそれぞれリズムや雰囲気を変えてほしいと依頼した記憶があります。今回のバージョンはその時のものを踏まえた構成でありながらも、さらにイメージが変わる曲になりました。
温かみのあるピアニカやタンバリンの音、うっすら入っている高口さんのゴスペルのような多重コーラスが月明かりの中小さな教会にいるような気持ちになり、厳かで優しい雰囲気を感じてとても気にいっています。
粉雪の月夜の中、静かな感情が高まってゆく様子を音で表現してもらえて感動しました。
高口さんが歌詞のイメージを大切にアレンジしようとしてくださったのが嬉しかったです。
キーが高く時間がかかってしまった歌入れも根気よく付き添って編集まで仕上げてくださり、感謝でいっぱいです。ウクレレのようなギターの音が好きです。
ちなみに自分の一番最初のデモはこちらで公開しています。歌詞もすこし違いますが、高口さんのアレンジでかなり素敵な曲に変身したのがわかると思います。


◆「星の色に似た海」
---作詞はしのさん。作曲はThe Bookmarcsなどでご活躍の近藤健太郎さん。
切なく哀しいほどの美しさ、デュエットも美しくて感激しました。詞が先ですか?物語が浮かびます。
ササキさんのアレンジ、遠くで鳴っているようなタサカキミアキさんのギターも曲をさりげなく盛り上げていますね。


小林:この曲は先に近藤さんから曲をいただいて歌詞をつけました。メロディを聴いた時、なんて美しい曲なんだろうと感動したことを覚えています。
コーラスラインも美しく、デモの段階で雰囲気が合っていたのでそのままデュエット曲になりました。
私は星座を見つけるのが苦手だったんですが、ちょうどその頃オリオン座の見つけ方を教えてもらえたことがあって、そのイメージをきっかけに歌詞を書いていくことができました。

ササキさんにアレンジを依頼したのは近藤さんの提案で、ササキさんの繊細で斬新な世界観でまた曲のイメージがガラッと変わったというか、新たな一面が見えた気がしています。キラキラとした切なさはそのままに、夜の海や星空の闇にひきずりこまれてしまいそうな怖さも感じて、物語のようで私もすごく好きです。ササキさんがレコーディングした環境音のような効果音のような変わった音がたくさん入っています。タサカさんの刻むギターの音も素敵ですね。近藤さんのボーカルや複雑なコーラスも聴きどころです。





---作品づくりに妥協しない小林しのさん。その情熱の源泉はどこから来るのかなあと思いましたが・・・いかがですか?

小林:自分の音楽活動に対してのモチベーションは自分が好きなものを作りたいという気持ちと楽しいという気持ちだけです。しかしながら1人では出来ないためひとえに周りの方のおかげで作品が出来ています。
音作りが好きだったり一緒に制作していて楽しいと思える方にお手伝いをお願いしています。ただ時々こだわりが強くなってしまうこともあり、どうしてもここはと思う時だけは何度も対応していただくこともあるので、その時は申し訳ない気持ちになったりもします。素晴らしいものに仕上げてくださる皆さんに感謝でいっぱいです。

---2020年前半は特にずっと家にいることも多かったと思います。その間、観て良かった映画はありますか?

小林:「ヒトラーに盗られたうさぎ」という映画がすごく好きでした。「おちゃのじかんにきたとら」などで有名な絵本作家ジュディスカーさんの幼少期のお話を実写化したもので、時代に翻弄されながら変わる環境の中でたくましく生きる生命力に満ちていて、2020年に観られてよかった映画です。映像も綺麗で可愛くておすすめです。

---3曲それぞれの世界に濃密に浸ることができ、3曲でもフルアルバムを聴いたような満足感がありました。それだけの3曲をしのさんと周囲の皆さんとで作り上げたのですね。とはいえ、フルアルバムを聴きたいなあ!というファンは多いと思います。そのあたりいかがですか。

小林:いつもありがとうございます。Cheer Up!さんにまた取り上げていただけてとても嬉しいです。2021年はCDでフルアルバムを出せるよう頑張りたいです。今回制作に関わってくださった皆様と一緒にアルバムを作っていけたらと思っています。

---2021年の展望や夢について教えて頂けますか?

小林:すごく稚拙かもしれませんが、曲を作ったあとにひとりで演奏やアレンジをした作品も発表してみたいと思っています。オンラインでギターを習っているのと録音環境がすこしずつ整ってきたので挑戦してみたいです。
アルバムでも演奏面で自分のできる役割をもう少し増やしていけたらいいなと思っています。

---どうもありがとうございました。次作についても、今後のしのさんのご活躍についてもますます楽しみにしております。




『Cold And Warm Winter』小林しの
1.うさぎのウシャンカ
2.小さな夜
3.星の色に似た海

2020年12月23日配信リリース

spotify、apple musicなどのサブスクリプションサービス、各配信サイトにてダウンロードも可能です。
◆spotify
https://open.spotify.com/album/4sxeKiT0KR9vJJFzHW41iR?si=-h9ePO7jT_i0Xxau5YRplg
◆apple music
https://music.apple.com/jp/artist/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%81%97%E3%81%AE/1453378334

クレジット:
「うさぎのウシャンカ」
作詞/ 作編曲:ササキアツシ
小林しの:Vocal
タサカキミアキ:Electric&Acoustic Guitar
ササキアツシ:Bass,Keyboard,Chorus,Programming
Recording:ササキアツシ、高口大輔
Mix:ササキアツシ

「小さな夜」
作詞/ 作曲:小林しの
編曲:高口大輔
小林しの:Vocal,Chorus
高口大輔:Drums,Bass,Guitar,Keyboard,Pianica,Percussion,Chorus,Programming
Recording&Mix:高口大輔

「星の色に似た海」
作詞:小林しの
作曲:近藤健太郎
編曲:ササキアツシ
小林しの:Vocal
近藤健太郎:Vocal,Chorus タサカキミアキ:Electric&Acoustic Guitar
ササキアツシ:Bass,Keyboard,Programming
Recording&Mix:ササキアツシ

Masterling(M1-3): 上村量
Illustration:薮内貴広
Design, Label Producer:近藤健太郎







◆小林しの プロフィール
1999-2002年 Harmony hatch というバンドで作詞、作曲とボーカルギターを担当。
2002年からソロ活動を始め、コンピレーションアルバムに多数参加。
2010年から活動休止していたが、2016年2月、14曲入りフルアルバム 「Looking for a key」を発売。
2018年10月、The Laundries「I Call Your Name」にゲストボーカル参加。
7インチシングル「Havfruen nat」発売。
2020年、ブルーベリーレーベルカセットテープシリーズ、「split ep series vol.3」に3曲参加。
ユメノマ「a quiet yumenoma」にて「ロマンティーク」歌唱参加。
ディスクブルーベリーにて前進バンドの音源をまとめた自主制作盤「Harmony hatch memoire」発売中。

小林しの Official Web
http://kobayashi-shino.com/
小林しのブログ「小さな夜のつづき」
http://kobayashi-shino.com/blog
小林しの Twitter
https://twitter.com/shinopotitan
SoundCloud
https://soundcloud.com/shino-kobayashi
philia records Official Site
http://www.philiarecords.com







<Cheer Up!関連リンク>

特集:Cheer Up! MUSIC 2020(2020年)
http://www.cheerup777.com/2020cheerup.html
特集:Cheer Up! Chrismas イラスト提供(2019年)
http://www.cheerup777.com/xmas2019/xmas2019.html
小林しの『Havfruen nat』インタビュー(2019年)
http://www.cheerup777.com/kobayashishino2019.html
小林しの『Looking for a key』インタビュー(2016年)
http://www.cheerup777.com/shino1.html



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