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阿部通子先生インタビュー
「本当のリーダーシップの在り方とは」


仙台一高特集の最後にご登場頂くのは、やはり顧問の阿部通子先生。
阿部先生は2011年に赴任し、仙台一高吹奏楽部顧問7年目だ。
先生とは旧知の畠山が、今回部員の皆さんにお話を伺ってみて感じたことを阿部先生にぶつけ、さらに深く仙台一高吹奏楽部の魅力を探った。






畠山:部員皆さんのお話を伺ってみて、生徒主体で部を作っているところ、一人一人の役割がしっかりあるところが凄くいいですね。
その仕組みはもともと先生が「みんなで出来ないとだめなんだよ」とやってきたと思うんですけど、このスタイルにいたった経緯を教えて頂けますか?

阿部:この部には中学時代に部長、生徒会長、クラス委員長、リーダー的役割についていた子が沢山いるんですよ。生徒によく話すのは「本当のリーダーシップ」の在り方。
本当のリーダーシップとは、その時、その場にいるメンバーの良さをみんなで生かし合うことが出来る人が本当のリーダーかな、と生徒にはよく話しています。

音楽は同じ曲でも演奏家が変われば、基本的な演奏法や解釈は同じでも、演奏する場所、演奏する年代・・・同じ人が演奏するのでも若い時に演奏するのと年を重ねてから演奏するのとでは、音楽はその人なりの味わいが出るのが魅力だと思うんです。
吹奏楽部を見てても、代替わりをすると同じ一高の伝統的な引き継がれているスピリットは変わらないんですが、メンバーが変われば音楽も時代と共に変わっていきます。そういうところが魅力だなあと思って一緒に活動しています。

畠山:音楽に直結していますね。

阿部:吹奏楽部は大所帯で、演奏一つとっても楽器ごとの役割があって男女一緒に活動出来て、そういう意味では社会の縮図というか、社会性を育てる環境としては最適だと自負しています(笑)。

畠山:本当にそうですよね。

阿部:先ほど生徒の話を聞いていて、「個人競技では出来ないこと」とか「仲間意識」という言葉が出てきて嬉しく思いました。
私が一番助けられてると思うのは、一人一人いろんな考えを持っていて、意見がぶつかったり話し合いやミーティングにとても時間がかかりいつまでも話をしている時もあるんですけど、一人一人が相手の今まで知らなかった面や違った着眼点、自分と違った意見を聞いても安易に批判しないで興味を持って聞き入れるというか・・・。たとえ受け入れなくても興味を持ってそれについて「ああ、そういう考え方もあるんだ」というとらえ方をしてくれる生徒が多いので、そこには私も学ぶところが多いです。

畠山:お互いを尊重するということに繋がっていきますよね。

阿部:でも少しずつ、主体的に自分の意見をぶつけたり表明したりする力が落ちて、穏やかになってる雰囲気もあるので、欲を言えばさっきの生徒インタビューのときのようにもっともっと発揮してほしいな。
やはり間違いたくない、失敗したくない、相手にどう思われるか常に気にせざるを得ないような時代にもなってきているので、その点はもっと破天荒になってもいいかな?と思うこともあります。

畠山:個性が埋もれやすくなるというかね。個性を持っているけどそれを出せずにくすぶっているような雰囲気というか・・・。

阿部:吹奏楽部については、生徒からも「ふつうのクラスメイトだったら仲良くなれなかったような人とも仲良くなれた」って話も出ましたが、そういう面も出さないと乗り越えていけない場面が部活では多いので、おおいにこの環境を生かして謳歌してほしいです。

主体性をどれだけ引き出せるか、どのぐらい自由に活動させられるか、その加減を見計らって。
私のやっていることと言えば音楽の正しい解釈の仕方、楽曲の解説は出来るだけ正しいものを教えたいと思うのですが、その他の活動の部分については「まずやってごらん」と言って、あまりにも非常識だったり逸脱している場合は注意はしますけど。






畠山:なんか、生徒と顧問という縦の関係じゃないですよね。
お互いにベクトルが合って「共存」というか、「共生」というか、対等な感じがします。
指示をするというより、背中を押すという印象を以前から受けていました。

阿部:でもまぁ高校生なので、お互いに自信がなくて決められないとか、どっちの意見にも落ち着かないとか、そういう時には必ず「先生・・・」って逃げ道としてやって来るんですけど、そこは「先生がこう言ってるからこうします」とは出来るだけ言わせないように(笑)。
やはり自分たちで決めたこと、自分たちで苦労してやったことには最後まで責任を持つし、その辺の兼ね合いはいつも口を出し過ぎず、でも放任にはしないように。加減は難しいですけど。
そこが大変だけどこの上なく楽しいです。

音楽作りに関しても、解釈が深くなり本番が近くなればなるほど、こうしたい、ああしたい、こういう解釈はどうか?など生徒たちの中から出てくるので、そうなってきてからが「音楽作り」だなと思っています。

畠山:好きだなあ、こういう環境。

阿部:ステージに乗ったら一年生も二年生も三年生も経験者も初心者もないから、音楽については想いとか考えを出来るだけ発信し合えるようにしていこうと話してるんです。
そうすることで、自分の想いを分かりやすく伝えるための工夫、言葉による表現力についてもすごく考えるので・・・。ヒントを与えるといろんなことを拡げて考えられる子たちなので。

畠山:生徒も先生も含めてお互いをリスペクトしながら、活動されているなあってすごく思いますね。

阿部:人によって良さがそれぞれあるので、この仕事を頼むならあの子って、活動しながら分かってきてますね。将来やっぱり教員になりたいとか、リーダー的役職につきたいとか学校全体としてもそういう生徒が多いので、本当のリーダーシップの在り方をね、ただ自分の考えを発信するだけでもだめだし、その辺を考えたり体得していく環境としてはすごくいいんじゃないかと思いますね。

畠山:部活動を通して、社会で生きていくために必要なことを学んでいるのですね。





阿部:OBたちもすごく顔を出してくれて、進学のアドバイスにのってくれたりね、そういう縦の繋がりは羨ましいぐらいですね。

畠山:縦の繋がりがあって、先輩方が現在何をしてるかをみんなに話してくれるから、一年生でも夢を語るんでしょうね。周りが頑張っているから自分も頑張ろう!とか、自分にも出来る!と思えるのはいいですよね。

阿部:私自身もいい環境にいると思っています。
もっと勉強しなきゃ!と思わせてもらえるし、音楽の教員になって良かったと思ってます。

あと、本当に役職が人を育てるというのはこういうことだなと実感するんですが、生徒に責任と課題を与えれば、自分の役職を自分なりにクリエイトしていく力がすごくあるんですね。
三年間の変容が本当に凄い。それが社会に出ていく上で社会性・協調性や能力に繋がってくれれば、学力や偏差値だけでは測れないものに繋がっていけばと思います。

音楽は基礎基本は変わらないし、古くからの作品は演奏されながら残っていく大事な文化の一つだと思います。音楽を通して社会を見られる、その時の流行とか受け入れられ方とか・・・吹奏楽コンクールの自由曲の流行一つとってみても時代と共に変容していく部分もあるので、音楽を介して生徒たちと一緒にコンクールに挑戦したり定期演奏会など披露するステージがあったり、時代の流れを感じながらいつも本番の緊張感を味わえるというのはとてもいいことだと思っています。

畠山:生徒の元々の好奇心もあるんでしょうね。

阿部:そうですね。みんなそれなりの志を持って入ってきているので、私は毎日襟を正してます(笑)。

畠山:この学校に身を置いてみたかったですよね。
第一回目からこんなに濃い内容を伺えて良かったです。どうもありがとうございました。






番外編:一高生に聞いてみました!<吹部に入って良かったな!と思うこと>

♪たとえクラスが一緒でも友達にならなかったようなタイプの人とも、吹部で自然と仲良くなれた。長く一緒にいることでその人のいいところ、好きだな!と思うところを発見できた。同じ部活になったからこそ気付けたことがいっぱいある。
♪みんなで一つのものを作りあげる喜びや達成感を知る事ができた。
♪音楽が生ものであるからこその楽しさを知った。
♪ピアノは一人で演奏するけれど、吹奏楽部はみんなで音楽を創るステップがあり楽しい。
♪シンプルに吹奏楽をやれることが嬉しい。
♪自分の考えを言うのが得意じゃなかったけど、音でなら好きなように表現できる。
♪先輩後輩関係なく自分の意見をちゃんと言い合って、みんなで話し合って決められる。
♪楽器を吹けること自体、入って良かった。


仲間との関係、楽器を演奏できる喜びを味わいながら日々活動している様子が伝わってきました。
取材の二人への合奏のプレゼント「ジャパニーズグラフィティ」、とても素敵な演奏でした。
仙台一高吹奏楽部の皆さん、この度はご登場頂きまして本当にありがとうございました!


【編集後記】
「Hello!吹部フレンズ」第一弾ということで、ドキドキワクワクの取材でした!
なんてったって、宮城県を代表する伝統ある学校ですからね!
インタビュアーという重要な役を務めるのも人生はじめての体験だったので少し緊張していたのですが、部員皆さんの活気溢れる対応に助けられ、終始楽しく取材をすることができました。
一人一人の個性を尊重し合いながら活動し続けている仙台一高吹奏楽部。そんな彼らをこれからも応援し続けようと思いました。
次はどんな学校と出会えるでしょうか〜?(畠山 渉)






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