native、BLACKQP'67など様々なリーダーバンドを持ち活躍するサックス奏者の中村智由さん。今回ご紹介するのは新バンド"Tokyo Simple Jazz Trio"。とても可愛らしいジャケットが印象的なアルバム『Wendy』をリリースしました。曲は全てスタンダードのカバー。ホッと心を落ち着けたい時、一息つきたい時にぴったりで、心和みリラックスできるサウンドが魅力のアルバムです。
今回は中村さんに新バンド結成の経緯やメンバー紹介、アルバムの曲についてお伺いしました。(2021年6月)

---新しいバンドなのですね。結成のきっかけやトリオ名の由来などについて伺えますか?

中村:クラブイベント出演が中心のバンド主体の活動から個人としての活動をに中心にシフトチェンジしていこうと思った2015年くらいに、親しいミュージシャンに一緒にジャズセッションして欲しいと声をかけていました。
nativeの活動が中心になった2000年くらいから、かっちり決まったオリジナルのバンドサウンドしかやらなくなってしまったんですが、nativeの結成以前にやっていたその時の気分でスタンダードジャズも演奏したりするようなライブを名古屋、神戸、東京で声かけた時に集まったメンバーで行うようになりました。

名古屋ではtrio de monochromeを始め、そして東京をベースにライブを開始したメンバーが、ギター塩川俊彦さん、ベース西川てるまささんとの今回のアルバムのトリオです。
割と世代が近くて歩んできたキャリアも共通しているので本当にリラックスして演奏できるメンバーです。誰がバンドリーダーという訳でなく3人でやりたい曲を持ち寄って演奏するというスタンスでやっています。

名前も付けずに活動していましたが、今回のアルバムリリースを期にバンド名をつけるという事で話し合って「東京をベースに活動するシンプルなジャズのトリオ」という事でそのまま”Tokyo Simple Jazz Trio”となりました。
名古屋在住の自分が東京というのも変な感じがするかもしれませんが、このバンドの活動拠点は東京なので(笑)(他の2人は東京在住ミュージシャンです)。

---アルバム制作のエピソードを教えて頂けますか?現在の状況下では大変なことも多かったのではないでしょうか?

中村:コロナ禍で、ライブをしているお店が時短営業や休業を強いられて、生活も自粛ムードの中、これまでのように自由なライブ活動ができずミュージシャンもかなりストレスを抱えているのですが、できる事をやっていくしかないので、音源制作に力を入れていく事にしました。
どういう形にするかはわからないけれどとりあえず録ってみようという事で昨年12月、時短営業のライブを行った翌日、横浜のスタジオでレコーディングしました。
レコーディングの演奏動画も同時に撮影したのでYouTubeにあげてもいいし、CDは作らずに配信だけ行ってもいいかと思ったのですが、自分が思い描いているトラディショナルなジャズのイメージをうまく表現できたので、どうしても形として残しておきたいという気持ちが強く湧いてきてCDプレスする事を決心しました。

内容は、全てスタンダード(カバー曲)でレコーディングを行うという前提で前日のライブでも事前に決めていた同じセットリストで演奏して、その前日ライブで録音した演奏を聴いてメンバー各自イメージを膨らませてレコーディングに臨んだので、一日で全9曲録る事ができました。
今まで自分が制作してきたアルバム音源と違って最低限の決め事をしただけのアレンジで、あとは自由に演奏するというジャズならではのスタジオセッションアルバムです。
録音、ミックスともに自分自身で行い、マスタリングをエンジニアの森広志さんにお願いしました。





---Tokyo Simple Jazz Trioのメンバー紹介をお願いいたします。

中村:メンバーは、ギター:塩川俊彦さん、ベース;西川てるまささん。
お二人ともnativeと同時期に活動していたクラブジャズバンドthe fascinationsのメンバーで、イベントでの対バンで出会いました。
the fascinationsの名古屋公演の際にはゲスト参加させてもらい、打ち上げなどで親交も深めていきました。
二人ともどちらかというと物静かで、the fascinationsでも破天荒なリーダー渡辺雅美さんを優しく頼もしく支えているのが印象的です。

塩川さんは、雰囲気に少し愁いを感じるのですが、ネガティブな意味でなくて、その雰囲気に真面目で人間的な奥深さを感じます。
演奏にもその性格が表れていて、今回のアルバムは静かでスローな曲が多いのですが、ソロもバッキングも本当に必要な音だけを選んで弾いていて、それが塩川さんならではの歌となって静寂の中にエモーショナルな躍動感を与えてくれました。
アルバムとは関係ないですが、永作博美さんが主演の映画「さいはてにて-やさしい香りと待ちながら-」にギターを弾く青年役で出演しています(笑)。

西川さんは、体も大きくてスキンヘッドで一見怖い人に見えるのですが、見た目とは裏腹に超優しい性格です。
僕が共演するベーシストみんなに共通してるのでベーシストの特性かもしれませんが、気遣いがあって頼りがいがあります。
このユニットはリーダー不在ですが、レコーディングでも西川さんが全体の流れを作ってくれて、煮詰まったりした時にも固執せずに適度なところで次の曲の録音に入る判断をしてくれたので、一日の限られた時間の中で、予定していた曲を全曲収録する事ができました。
キャリア豊富でいろいろな場数を踏んできているので、主流とはいえないこの小編成のマニアックなジャズユニットのコンセプトもしっかりと理解して適格なアプローチをしてくれます。
愛称は、"てるてる"です。

---今回はスタンダードナンバーといっても知らない曲が多かったです。その分先入観無しに楽しめました。選曲はどのようにされたのですか?

中村:活動を始めてからライブで演奏した曲の中からの選曲です。
メンバーそれぞれが、このユニットに合いそうな曲を選んで持ってきたという感じです。
と言ってもフロントの僕の演奏スタイルを考慮して二人も選曲してくれたと思うので、ウエストコースト、白人系のジャズナンバーが多いです(マニアックですが、この手が好きな人には納得の選曲かと思います・笑)。

---ジャケットがとても可愛いですね。どなたが描かれたかのですか?

中村:いつも自分のリリース周りの面倒をみてもらっている方に音源を聴いてもらった際に、ジャケットはイラストがいいんじゃないという案をいただいて、自分の知り合いでクリエイターの高島ボンドさんにお願いする事しました。
彼は、クラブイベントのフライヤーデザインをたくさん手掛けていて、以前僕がBLACKQP’67でレギュラーで出演していた「マサマンボのゴールデンアワー」のフライヤーデザインを担当していました。
高島さんのイラストデザインは、ビンテージ感があって、とても可愛らしい感じのデザインなので、女性の人気も高いです。
最近はイラストだけでなくカメラマンとしても活躍していて、僕も趣味で写真を撮っている縁で、名古屋にあったジャズ系情報の発信の地le jazz modalオーナー岸川マサトシさんと三人でphoto operatorsを結成して一昨年には写真展も開催しました。

---心が和み、ほっとする演奏ばかり。夜やリラックスタイムにお茶を飲みながらくつろぎたくなります。

中村:ありがとうございます!!
テンポがゆったりした曲が多いので聴いていて眠たくなってしまうかもしれないですが…いい具合に心地よい眠りに誘ってくれるのではないかと思います(笑)。
アルバム通してリリシズムを感じる一貫した雰囲気は出せたかと。今回僕は、その雰囲気が出せた事がこのアルバムの一番のセールスポイントだと思っています。

---優しくて癒される「wendy」「two for the road」。
「how my heart sings」「blame it on my youth」では中村さんの語り掛けるようなサックスの音色が最高。ギターが印象的な「how deep is the ocean」。
「I’m getting sentimental over you」では特に3人のアンサンブルワークが心地良く、ベースもかっこいいですし、ちょっとノスタルジーも感じました。


中村:ジャズスタンダード「blame it on my youth」「I’m getting sentimental over you」「how deep is the ocean」は、50、60年代のウエストコーストジャズ風のニュアンス。
タイトル曲で敬愛するポールデスモンドの「wendy」、ヘンリーマンシーニの作曲した映画主題曲「two fro the road」。
ビルエヴァンスのレパートリー「how my heart sings」、チャーリーヘイデンの「our spnish love song」、チックコリアの「windows」。
メロディックな白人系ジャズのニュアンス。
ビート感があってゴリゴリのジャズが好きな人には、だいぶ物足りないかと思いますが、一方でサラッと聴ける押し付けがましくないジャズを求めてる人には、ちょうどいいアルバムかと思います!

---惜しくも最近逝去されたチックコリアさんの「windows」を選ばれたいきさつは?

中村:チックコリアのオリジナルはラテン風味もあってアグレッシブでいかにもチックコリアの曲という感じですが、僕たちのは、曲のメロディックな部分を強調したアプローチになっています。
昨年亡くなってしまったクールジャズの巨匠でサックスのリーコニッツが、ピアニストのハルギャルパーとデュオでこの曲を演奏していて、西川さんにそのアルバムを勧められて聴いてからとてもインスパイアされて、自分でもやってみくなりました。

---他にも、チックコリアさんの曲やアルバムで特にお好きなものはありますか?

中村:チックコリアは、自分世代には影響の強いミュージシャンですが、クラブイベントに出演していた頃にDJがよく流していたアルバム"return to forever"と"light as a feather"は、よく聴きました。
フローラプリムのスキャットヴォーカル、ジョーファレルのフルート、そしてチックコリアのフェンダーローズのサウンドは、コズミックな雰囲気を醸し出していてクラブによくマッチします。
nativeの楽曲アレンジする際にも影響を受けているところがたくさんあります。

---このユニットを含め今後の展望や、2021年の予定などあれば教えて頂けますか?

中村:コロナ収束後、音楽シーンがどうなっていくのか見えないですが、自分としては、コロナ禍で時間ができて新しくチャレンジできた事を一つずつ形にできたらと思っています。
そのまず第一弾がこのTokyo Simple Jazz Trioのアルバムリリースです。
せっかくアルバムリリースするので、リリース記念ライブも開催したいです。
状況を見つつ、開催時期や場所を決定したいと思います。

昨年末から今年始めに他にもレコーディングをしているので、第二弾も楽しみにしていただけたら嬉しいです。

---どうもありがとうございました。中村さんの今後のご活躍や新譜がますます楽しみです。




『Wendy』Tokyo Simple Jazz Trio

1 wendy (Paul Desmond)
2 two for the road (Henry Mancini)
3 how my heart sings (Earl Zindars)
4 I’m getting sentimental over you (George Bassman)
5 blame it on my youth (Oscar Levant)
6 how deep is the ocean (Berlin Irving)
7 our spanish love song (Charlie Haden)
8 windows (Chick Corea)

発売日:2021年6月25日
価格¥3,000 (税込)
規格品番:NAT-0008
レーベル:nat records

Tokyo Simple Jazz Trio
sax 中村智由
guitar 塩川俊彦
bass 西川てるまさ










◆中村智由 プロフィール
大学卒業後よりプロのサックス奏者として演奏活動を開始。
ダンスホールやジャズクラブでの活動を経て、1999年に自身がリーダーのジャズバンド"native"を結成。
nativeでドイツ、中国など海外での公演、サマーソニックへの出演、海外レーベル含む10枚のアルバムをリリース、CDショップのセールスランキングにもチャートインする。
演奏活動と並行しサウンドプロデュースも行っており多数の人気カバーアルバムを制作している。

中村智由 Official Web Site
http://blackqp.iiyudana.net/
Twitter
https://twitter.com/blackqp67


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trio de monochrome『残像 -après l’image-』 インタビュー(2019年)
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