Ricarope「Humorous」リカロープ 5thアルバム「ユーモラス」発売記念インタビュー



ピアノポップシンガーソングライターのリカロープさんが2019年9月に5枚目のニューアルバム『Humorous』を発表しました。
「喜怒哀楽があるからこそ、人生はユーモラス」がテーマの本作。リカロープさんの表情豊かな歌唱力と楽曲の魅力とで、何度も何度も味わいたくなる素敵な作品に仕上がっています。
今回はこの作品の魅力を掘り下げたくて、リカロープさんご自身と、長くリカロープさんのプロデューサーとして活動を支えている及川雅仁さんにじっくりインタビューさせて頂きました。たくさんのエピソードをお読み頂きながらぜひリカロープさんの新作をより多くの方にお聴き頂きたいと思います。(2019年12月)

リカロープ インタビュー 及川雅仁 インタビュー


【リカロープ インタビュー】


--- 4年ぶり5枚目のアルバムとのこと。今回4年ぶりにアルバムを作ることになったいきさつについて教えて頂けますか?

リカロープ: 前作のアルバム「a little trip」で、「今」を出しきりリセットされたからか、今までの作風とは異なる曲も浮かぶようになったんです。「ひとりごと」や「アイスクリーム」が出来た時、楽曲でもサウンドの面でも、ユーモアの要素を大切にしたアルバムを作りたいと思いました。というのも、ユーモアに救われたことがたくさんありまして。例えば、私の下唇の形は、おばあちゃん譲りなんですね。そのおばあちゃんのお葬式で、ふと横を見たら。。親族一列全員下唇が出ていたんです。おばあちゃんのDNAが!と、悲しいのに笑いが止まらなくなってしまって。悲しいことも、別の角度から見るとまた違った発想が生まれるといいますか。物事を多面的に見たり、ユーモアをプラスすることで切り抜けてきたことがたくさんあるので、そんなエッセンスを散りばめられたらいいなぁと思っていました。


--- 制作期間はどのぐらいかかりましたか?レコーディング中、印象的なエピソードがあれば教えて頂きたいです。またプロデューサーの及川雅仁さんとのパートナーシップはいかがだったでしょうか。

リカロープ: 制作期間は、一年ほどです。レコーディングで、ドラムの西村くんが一発目で素晴らしいテイクを次々決めていくという神業を見た時、おばあさんになる前に、この域に達したいと本気で思いました。ピアノや歌を録る時、お得意の「あともう一回いいですか?」は、もうやめます(笑)。

及川くんは、リカロープの良き所と欠点を知り尽くしているので、全てを委ねることができます。いつもピアノの弾き語りを聴いてもらって、こんな風なアレンジや世界観にしたいとイメージを伝えるのですが、それを遥かに越えるアイディアを出してくれるので、毎回嬉しい驚きと発見があります。楽曲が生まれ変わるといいますか、もうピアノ弾き語りのデモは、とてもじゃないけど聴けません(笑)。
及川くんは作曲もするので、ストリングスやベース、ギターのフレーズがメロディアスなのも魅力です。掘っても掘っても出てくる計り知れない音楽の知識とセンスを秘めていて、それが至るところで開花するといいなぁと、思っています。


--- 「喜怒哀楽があるからこそ、人生はユーモラス」が今作のテーマだそうですね。
そう思うに至った経緯は?


リカロープ: 私は、喜怒哀楽がギュッとつまっているものに、とても魅かれるんですね。例えば、私の人生のバイブルである、悲哀に満ちた人生をも笑いに変える「男はつらいよ」の寅さんとか、人間ドラマの宝庫である、向田邦子さんの小説やエッセイとか。
喜怒哀楽、4つの感情が織り交ざると、なんてユーモラスな世界になるのか!ひとつでも欠けていたらつまらん!と、ずっと思ってきたので、自然とそういう作風になりました。


--- そうだったんですね!すごく共感します。
リカロープさんの曲作りはどのようにされているのですか?
曲と詞が一緒に出ることが多いと以前のインタビュー記事で読んだことがありますが今作はいかがでしょう。


リカロープ: 今作は、メロディーが先に浮かぶことが多かったです。携帯のボイスメモに、ひたすら浮かんだメロディを録音するのですが、1番やっかいなのは、飛行機の中で思いつく時です。ボソボソ口ずさんで、この上ない怪しさです。
メロディーには、これは、サビ!これはAメロ、Bメロ!というようにキャッチー度にランク付けがありまして(笑)パズルのように組み合わせます。運良く、曲と詞がワンフレーズ同時に浮かんだ時は、そこから広げて一気に書き上げることもあります。


--- 英語の詞を作るのは難しそうに感じますが、リカロープさんはサラサラと英語の詞も作られるのですか?
それとも日本語で作ってから英語に翻訳しているとか?


リカロープ: 全然サラサラ出てこずです!メロディを英語風に口ずさんでみて、なぜだか日本語よりも英語の方がしっくりくるもの、英語の方がメロディの響きがよくなるものが英語曲行きになります。その後、日本語でこんなことを伝えたいとつらつら書いて、英語をあてはめていきます。珍glishにならぬよう、辞書はお友達です。


--- 今作のゲストは豪華ですね!ゲストにまつわるエピソードを教えて頂けますか?

リカロープ: 嶋田さんが何パターンも弾いてくれたフレーズがどれもこれも素晴らしく、選ぶ辛みを味わいました。音源に入らずだったテイクを、まとめてお披露目したいくらいです。


--- ジャケットがなんとも可愛らしくて素敵なのですが、なんとリカロープさんの若きお友達、7歳の画伯の作品だとか。クオリティ高いですよね!どんな画伯なのでしょう。

リカロープ: 私の大学時代からの親友の息子ちゃんなんです。一星(Issey)くんといいます。ハワイの自然豊かなカウアイ島に住んでいます。よく一緒に遊んだ赤ちゃんの頃からわずか数年後に、この素晴らしい絵を!まさにアルバムにぴったりのユーモラスな世界を描いくれました。未知数の才能に、感涙です。


--- ここからは曲をピックアップしてお話を伺います。
「半透明なストーリー」は可愛らしくウキウキしてきますね。伸びやかな歌声でアルバムの世界にたちまちひきこまれました。


リカロープ: 初めてミュージカル調の曲にチャレンジしました。「ビルの隙間に 揺れる赤」の「赤」を、限りなく夕日に近い赤になるように歌ったり、一語一語セリフのように、丁寧に歌うよう心がけました。


--- 「ひとりごと」もリズムが楽しい感じで、元気が出ます。とてもきれいなコーラスにうっとりしました。ひとりごと、という言葉が耳に残ります。

リカロープ: ありがとうございます。コーラスにうっとりしていただいたのに大変申し訳ないのですが、私の周り、きっとみなさんの周りにもいらっしゃるであろう、理不尽極まりない、おクソやろうさんに向けての怒りソングです。「気立てのいいふりして、腹ん中真っ黒だな。」って、ひとりごとが出ちゃったんです。聞こえてたけど。目だけ怒りで、笑顔で歌っています。怖いですね。私の実話曲です。


--- 怒りソングだったとは!もう一度改めて聴いてみます。
さて、「こっとん」も好きな曲です。深い歌詞ですよね。こっとん、こっとんって、自分でも口にしたくなる響きのいい言葉。イケミズさんのアコーディオンがあったかさを増してると感じます。


リカロープ: もともとNBC長崎放送のラジオ番組のジングルとしてワンフレーズ制作したものを広げて、曲にしました。こっとんの性質を人間に例えています。イケミズさんの温かいアコーディオンが、お上品なスジャータ感を醸し出してくれています。


--- リードトラックの「アイスクリーム」は爽やかで軽快、まさにPOPな魅力満載。リズムやコードも凝ってますね。

リカロープ: デモの段階でアドリブで弾いた、及川くんのギターフレーズが最高で、本番でそのまま完コピしてもらいました(笑)。
アイスクリームを食べていた時に思いついた曲です。ぼーっと考えごとをしていたら、いつの間にか溶けていて。それを見て、あぁ、私はよくタイミングを逃す人生だなぁ… と(笑)。時間には限りがあるし、明日何が起きるかも分からない世で、今を大切にしなくちゃ、大切な人を想う気持ちはちゃんと伝えなくてはと思ったんです。歌詞に、Minnie Riperton(ミニーリパートン)の曲「Lovin' you」が出てくるのですが、そのジャケットで彼女が溶けかけたアイスクリームを持っているんです。ミニーは、31歳という若さでこの世を去っていて、敬愛するミニーの儚さも投影されています。


--- 「タイムフライズ」は、ついつい日々の生活に流されがちな大人が共感するような歌詞と感じます。

リカロープ: 伝わってうれしいです。タイムライズ(Time flies.)は「光陰矢の如し」、時の流れが早い日々で生まれた曲です。「dream work love いろいろ 大切な順に並べ直してみる」と歌詞にありますが、その3つのバランスの中で、頭がこんがらがっていた時期に作りました。が、重っ苦しくはなく、軽快なポップスに仕上げています。


--- 「Call」は嶋田さんのギターで包み込まれるような曲ですね。おおらかさ、あったかさのあるリカロープさんの歌声がただただ美しい。

リカロープ: 英語なのでさらりとしていますが、初めて、生と死を描いた曲です。映画からインスパイアされた曲で、その映画を無音で見ながら作曲しました。最後のお別れを告げるものと、その大切な人をどうにかして引き止めたい主人公の対話形式で描かれていますが、希望もちゃんと残しています。嶋田さんの優しく美しいギターの音色が、まさに映画のワンシーンのようです。


--- 「緑ある星」は子供たちへの思いが伝わってきて、教師をされていたことがあるリカロープさんの視線の優しさに嬉しくなります。
アルバム全体にリカロープさんのやさしさが伝わってくるのがいいですよね。


リカロープ: 子供たちが、少しでも生きやすい未来になるように、願いを込めて作りました。生きていく上で、ヒントになればうれしいなぁという言葉を散りばめています。アニメ映画のエンディングに流れるイメージで。
この曲はスイスカメラの梶山さんのバイオリンがとても素敵です。せつなく優しく情緒的。随分昔に書いた曲なのですが、このタイミングで梶山さんにバイオリンを奏でていただけて、長い間温めた甲斐がありました。


--- リカロープさんは2002年に1stアルバム『Rica tea』をリリースされました。
その頃からのご自身の変化をどのようにとらえていらっしゃいますか?


リカロープ: 今デビューアルバムを聴くと、ひたすら全力疾走。足し算の嵐。「音楽と自分」が、何が何だか分からぬままデビューしちゃった感が否めません(笑)。
曲作りにおいて、主観的にしか作れなかったものが、よい意味で、今ではだいぶ客観的に作れるようになりました。


--- このWEBマガジンの恒例企画です。
リカロープさんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?


リカロープ: スピッツの「優しいあの子」です。NHK連続テレビ小説「なつぞら」に書き下ろされた楽曲なのですが、北海道の大自然の中、夢へと駆け抜ける主人公を優しく描く詞、草野さんのあのお声。。永遠リピートです。
デビューから28年たった今でも、こんなにもフレッシュな名曲を生み出せることに、勇気づけられます。


--- 今後の展望と夢について伺えますか?

リカロープ: 長いことお蔵入りになっている楽曲を掘り出し、陽の当たる場所に出してあげたいです。そして、経験や老化と共に、曲作りのアイディアやモチベーションが枯渇せぬよう、水瓶に水を注ぎ続けます。よっこらしょ。


--- どうもありがとうございました。今後の作品も楽しみにしております。




Ricarope『Humorous』トレーラー


Ricarope『Humorous』
Ricarope『Humorous』

1. 半透明なストーリー
2. ひとりごと(Album Mix)
3. Sing!(Album Version)
4. こっとん
5. アイスクリーム
6. Beach
7. タイムフライズ
8. Call
9. 緑ある星

発売日:2019.09.25
規格品番:CEBL-003
価格:2,200円(税抜価格)
レーベル:C'est-bon! label(セボンレーベル)


【ゲストミュージシャン】
イケミズマユミ(Three Berry Icecream、ex.BRIDGE)
嶋田修(Swinging Popsicle、the Caraway)
梶山織江(スイスカメラ)
西村悟志(ex.SPARKLING☆CHERRY)
ウワノケンタ(フカノマサシ&THE SIDEWINDERS)


【作品紹介】
「日々の暮らしに、ユーモアを。」
前作『a little trip』から4年ぶりとなるオリジナルアルバム。「喜怒哀楽があるからこそ、人生はユーモラス」がテーマの今作は、管弦楽、エレクトロニカ、パンクロック、ジャズ等のテイストを加えつつ、メリハリのきいたピアノポップとして昇華された9曲を収録。
なにげない日常を切り取り、美しいメロディにのせるソングライティング力が際立つ。爽快なリードトラック「アイスクリーム」、子どもたちへの想いがつまった「緑ある星」、ラジオ番組に提供し好評を得たジングル「こっとん」のフルverなど、バラエティに富んだ意欲作となっている。
リカロープの小さな友達、7歳の画伯が描いたジャケットもまた、ユーモラス。緻密な音作りで遊び心満載、感情を震わす珠玉のアルバム。


リカロープ

【プロフィール】
Ricarope(リカロープ)。
ピアノポップシンガーソングライター。
東京都世田谷区生まれ、神奈川県海老名市育ち。
類い稀なるメロディーセンスに、心にふんわり響く歌声。日常の断片を切り取り、弾むピアノにのせて人生を歌う。
TVCMの歌唱やナレーション、ラジオのジングル制作など、幅広く活動している。


Ricarope official site
https://ricarope.com

Twitter
https://twitter.com/ricarope

Ricarope official channel(YouTube)
https://www.youtube.com/channel/UCOMzgGBSs45hgJ6UUTrKy-w


<及川雅仁 インタビューはこちら>




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