Ricarope「Humorous」発売記念 及川雅仁 インタビュー



リカロープさんのプロデューサーである及川雅仁さんに、ニューアルバム『Humorous』にまつわるお話を伺いました。
及川さんには2016年のギターポップ特集でも、ギターポップシーンを支える裏方として様々なことを語って頂きました。実は今回のリカロープさんの特集、ちょっぴりいつもとデザインが違うな?と思いませんか?最近抱え込みすぎな編集長に代わりデザインも行って下さったんです(感涙)プロデュースってどんなことをするの?という方にもぜひお読み頂きたい記事です。(2019年12月)


リカロープ インタビュー 及川雅仁 インタビュー


【及川雅仁 インタビュー】


--- リカロープさんをプロデュースするようになって長いと伺っておりますが、ご自身でどのように変遷を感じますか?

及川: 初めてプロデュースというクレジットで参加したのは2009年の「Good morning!」からになります。丁度10年ですね。最初は一緒にデモ作りから始まり、今では作品の方向性や選曲など、一緒に考える範囲はかなり広がったと思います。
やればやるほど、リカちゃんのシンガーソングライターとしての才能には感服しております。


--- 曲作りの時点でリカロープさんから相談を受けることもあるのですか?

及川: 僕が最初のデモを聴く段階で、メロディーや歌詞がほぼ出来上がった状態が多いんですよ。
そこからのコード進行だったりリズムだったり、アレンジが関わってくる部分からお互い相談し合う流れが多いですね。


--- 今回、及川さんはどの楽器を担当されたか教えていただけますか。

及川: ベースやギター、少しだけオルガンやシンセも弾きました。あとは珍しく僕のコーラスが2曲入っています。ビートルズやビーチ・ボーイズ風な雰囲気ですので聴くとすぐわかると思います(笑)。


--- ここからは曲をピックアップしてお話させて頂きます。
「半透明なストーリー」は可愛らしくウキウキしてきますね。伸びやかな歌声でアルバムの世界にたちまちひきこまれました。


及川: 一番アレンジに時間がかかった曲です。リカちゃんはミュージカル風なイメージを持っていたので、ジャズコードで作り込んで、弦や管もたくさん入れましたね。
あとはドラムのキックをノーミュートにしたり、ベースもフラット弦で弾いてみたり、音作りでも色々挑戦した曲です。


--- 「ひとりごと」も元気が出ます。とてもきれいなコーラスにうっとりしました。

及川: 歌詞がすごい曲ですよね(笑)。ロックな曲にしたいと、みんな意気込んで演奏しました。いつも座って弾くのに立って弾いてみたり。
コーラスもわざと気持ち悪い和音にしたり、リカちゃんが色々チャレンジしてくれましたね。この曲はアルバム全体の傾向に合わせて、先行シングルとは大分ミックスを変更いたしました。


--- 「こっとん」は深い歌詞ですよね。こっとん、こっとんって、自分でも口にしたくなる響きのいい言葉。イケミズマユミさんのアコーディオンがあったかさを増してると感じます。

及川: 暖かい詞ですね。元々ラジオの番組タイトル曲で、サビだけは一度録音していたんです。今回フルバージョンになって、アコーディオンとピアノでフレーズを掛け合ったら可愛いかな、と思いイケミズさんにお願いいたしました。お陰で優しくも洒落た雰囲気になって嬉しいです。


--- リードトラックの「アイスクリーム」は爽やかで軽快、まさにPOPな魅力満載。リズムやコードもこってますね。ベルの音がきれいで印象的。ライブで盛り上がりそう。

及川: リカロープはピアノ中心なので、ライブで盛り上がりそうなギターメインの曲ってあまり無かったんです。リカちゃんもギターが鳴っているイメージで作曲したと聞いて、丁度良いなと思ってギター中心のアレンジにしました。ドラムもリムショットで激しめにプレイして頂きましたね。あっという間に時間は過ぎていくというメッセージを疾走感に変えるよう意識しました。
ベルは歌詞にある「あの5時の鐘」をイメージしたものです。さり気なく入れたものですが、気付いてくださって嬉しいです。


--- 「タイムフライズ」は、ついつい日々の生活に流されがちな大人が共感するような歌と感じます。

及川: これは主人公の絵がすぐに浮かびまして、わざと少しルーズに演奏した曲です。それがやってみると逆に難しかったですね。
最後に主人公は大切な事に気付くのですが、そこからトランペットを入れて華やかな未来に繋ぐようにイメージしました。


--- 「Call」はthe Caraway嶋田さんのギターでしょうか。包み込むようなおおらかさ、あったかさのあるリカロープさんの歌声に聴き惚れます。

及川: リカロープでは珍しい曲調ですが、個人的にとても好きな曲です。デモを聴いた時に、教会でリカちゃんと嶋田さん(Swinging Popsicle/the Caraway)が二人で演奏している絵がパッと浮かんだんです。
この曲はデモを作り込まずに、ギターアレンジを嶋田さんにお願いいたしました。嶋田さんはカッティングやアルペジオの名手ですが、指弾きもとても素敵なんですよ。たまに、スタジオで遊びでチラッと弾いていたりするのですが、メンバー全員が真剣に見入ってしまう事があります。今回、イメージ以上のギターを弾いてくださって感激した曲です。


--- 「緑ある星」は子供たちへの思いが伝わってきて、教師をされていたことがあるリカロープさんの視線の優しさに嬉しくなります。

及川: リカちゃんだからこそ作れた、リカロープ屈指の名曲だと思います。僕にとっても思い入れの強い曲で、ずっとリリースしたい気持ちが強かったんです。
この曲は昔からライブでよく演奏していたんですよ。唯、イメージが壮大だったので、すぐに形に出来ずに数年温めていました。だから今回、やっと形に出来て嬉しいです。
スイスカメラの梶山さんのバイオリンがとても素敵なので、是非そちらも聴いて頂きたいです。


--- 今回のゲストについてエピソードなどあったら教えて頂けますか?

及川: イケミズマユミさんのユニット「Three Berry Icecream」で嶋田さんがサポートギターをされている事もあって、今回繋いで頂いたご縁ですね。マユミさんのアコーディオンは少ない時間の中、プレイや音色はもちろん、楽曲に合わせた素敵なフレーズを提案して頂きました。ゲスト史上最速で録り終えて、凄いなぁと思いました。その後お茶した時間の方が長かったという(笑)。

スイスカメラの梶山さんも、元々はキャラウェイでよくご一緒していたんです。いつもライブで感情豊かなバイオリンを観ていて、いつかリカロープでもご一緒したいと思っておりました。今回、嶋田さんの人脈に大分助けて頂いておりますね。

トランペットのウワノ君は前回の「a little trip」や、僕がプロデュースした歌手 常盤ゆうさんの作品にも参加して頂いているんです。とにかくアーティストのキャラクターに合わせてカッコよくも可愛くも吹いて頂けるので、とても信頼しております。

ドラムはライブでもお馴染みの西村悟志さんです。安定の演奏ですし、毎回デモをとても聴き込んでくれているのがわかるんですよね。さとちゃんは匠のドラムテクニックもさることながら、場を和ませてくれる皆からの愛されキャラです。


--- 今回もトータルプロデュース、そしてデモもかなり作り込んでいらしたのでしょうか。
及川さんは、世界観が音で伝わるアレンジを心がけていらっしゃるそうですね。


及川: 今回もデモはかなり作り込みました。リカちゃんも曲自体は12、3曲は用意してくれていて、その中から二人でアルバムのストーリーや世界観を色々模索しつつ選曲していきましたね。録音まで進んで今回イメージ的に収録しなかった曲も、今後どこかでお披露目できればと思ってます。

アレンジ的にキーになったのは、1曲目の「半透明なストーリー」ですね。ホーンやストリングスなど音数が多いのですが、前作よりも役割を明確に出来た手応えはあります。単純に足し算をするのではなく、キレの良いリズム担当、優雅な安らぎ担当といった、構成や歌詞に合わせた楽器のチョイスをしました。


--- 最近の及川さんの音楽活動について、リカロープさん以外ではどのようなことをされているのですか?

及川: いくつかのバンドでライブサポートなどをさせて頂いております。最近ですとthe Sweet Onionsの高口さんに声をかけて頂き、KNIT RED RUMの「Sunset」と、オニオンズの「夏のシンフォニー」のレコーディングに参加しました。この2曲、偶然「Humorous」と同じ発売日だったんですよ(笑)。オニオンズもKNITの刈間君も出会って長いのですが、どちらもレコーディングは初で嬉しかったです。

あとライブに参加しているthe Carawayで大阪への遠征ライブがあります。去年は名古屋に遠征したのですが、今回もとても楽しみです。ちなみにキャラウェイのライブメンバーでもあるベースのtenちゃんとは、the cat flowersで一緒にリズム隊をやらせて頂いていて、夏に福島へ遠征いたしました。

実は他にもレコーディング中のプロジェクトがいくつかありますので、また色々発表していければと思っております。


--- 及川さんにとって、前回もいろいろ教えていただきましたが、最近のCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?

及川:
Tortoise「TNT」
Nujabes「Modal Soul」
Jaco Pastorius「Word Of Mouth」


前回は自分のルーツばかりでしたので、今回は別でよく聴いている作品を挙げました。Nujabesは音楽に詳しいエンジニアの友人が教えてくれて、すぐにハマりましたね。どれも聴いていて気持ち良い作品ですので、作業中などによく流しています。リラックスしながらテンションも沸々と上がりますよ。


--- 今後の展望や夢を教えて下さい。

及川: 来年はリカロープのライブをたくさんやりたいですね。リカちゃんは全国のラジオ番組にも出演しておりますので、遠征なども出来ると嬉しいなとは思います。個人的にはアレンジや作曲の機会をもっと増やせる様に頑張りたいと思います。


--- どうもありがとうございました。




Ricarope『Humorous』トレーラー


Ricarope『Humorous』
Ricarope『Humorous』

1. 半透明なストーリー
2. ひとりごと(Album Mix)
3. Sing!(Album Version)
4. こっとん
5. アイスクリーム
6. Beach
7. タイムフライズ
8. Call
9. 緑ある星

発売日:2019.09.25
規格品番:CEBL-003
価格:2,200円(税抜価格)
レーベル:C'est-bon! label(セボンレーベル)


【ゲストミュージシャン】
イケミズマユミ(Three Berry Icecream、ex.BRIDGE)
嶋田修(Swinging Popsicle、the Caraway)
梶山織江(スイスカメラ)
西村悟志(ex.SPARKLING☆CHERRY)
ウワノケンタ(フカノマサシ&THE SIDEWINDERS)


【作品紹介】
「日々の暮らしに、ユーモアを。」
前作『a little trip』から4年ぶりとなるオリジナルアルバム。「喜怒哀楽があるからこそ、人生はユーモラス」がテーマの今作は、管弦楽、エレクトロニカ、パンクロック、ジャズ等のテイストを加えつつ、メリハリのきいたピアノポップとして昇華された9曲を収録。
なにげない日常を切り取り、美しいメロディにのせるソングライティング力が際立つ。爽快なリードトラック「アイスクリーム」、子どもたちへの想いがつまった「緑ある星」、ラジオ番組に提供し好評を得たジングル「こっとん」のフルverなど、バラエティに富んだ意欲作となっている。
リカロープの小さな友達、7歳の画伯が描いたジャケットもまた、ユーモラス。緻密な音作りで遊び心満載、感情を震わす珠玉のアルバム。



及川雅仁

【及川雅仁 プロフィール】
1977年 東京都出身。ベーシスト/アレンジャー。
作曲・プロデュースからアートワークまでこなすマルチプレーヤー。
(参加アーティスト)
Ricarope / the Caraway / 常盤ゆう / the Sweet Onions / the cat flowers / KNIT RED RUM / 藍田理緒 など。

Twitter
https://twitter.com/mashvox

Ricarope official site
https://ricarope.com

【Cheer Up!関連リンク】
特集ギターポップ 及川雅仁インタビュー(2016年)


<リカロープ インタビューはこちら>




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