Cheer Up!みやぎ


吹部Q&A


◆第二回 クラリネットの音色について





嬉しいことに、「吹部Cheer!トーク〜吹奏楽Q&A〜」に2通目のお便りを頂きました。
今回はご自身の求める音色と、実際に出す音色のギャップについての質問。
部活をやっていれば、先輩や顧問の先生に相談したり、今はLINEグループやTwitterをやっている学生さんも多いので、アドバイスをくれる相手も多いと思います。
とはいえ、なかなか相談しづらいことがあったり、プロの演奏家はどんなふうに乗り越えたのかな? そんな疑問があれば、ぜひCheer Up!みやぎにお便りを下さいね。以下のどの方法でもOKです!

●TwitterのDM(Twitterアカウント:cheerupmiyagi)https://twitter.com/cheerupmiyagi
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今回もプロの演奏家が丁寧なアドバイスを下さいました。
お便り下さった方だけでなく、多くの学生さんが読んで参考にして下さることを願います。


◆千葉友希さん(クラリネット奏者)
◆武田和大さん(サックス・フルート・クラリネット奏者)






こんにちは。ご質問ありがとう!
E♭クラリネットをいま担当しているのですね。

「どうしても高音がきつくなってしまいます。」
ということに、私から2点のアドバイスを出来たらと思います。

(1) まずは事実の確認です。
具体的にどの音から「きつい」と感じてしまいますか?
どの音までは「ポー」と吹けますか?
低い音から半音ずつ吹いてよく聴いてみて、確かめてみましょう。


…吹きましたか?
どの音が「きつい」と感じましたか?
または、意外と「きつい」と感じなかった?
その事実が分かったら、最初の一歩、前進出来たよ!

次に、以下のような練習をするのはどうでしょうか?

●例えばソが「きつい」と感じた場合。
レガートで半音下のファ#から→ソへ、ロングトーン。最初に吹いたファ#に、ソを似せていきましょう。
そうしたら、ソからソ#というように、半音で上がっていく。

●今度はテヌートタンギングで。




(2) 楽器にはそれぞれ個性があります。その個性が、アンサンブルでは役割を持ちます。
例えばE♭クラリネットだったら・・・
●B♭クラリネットの中音域のような温かい音色が必要なとき
●みんなの1オクターヴ上の細い線でメロディの膜を作ってあげるとき
●厳しいスタッカートで攻撃的なキャラクターになるとき…等々 

曲によって、さらに曲の中のどんな場面かによって役割が変わります。
時に、「きつい」キャラクターが必要なときもあると思います。
沢山の音色を使い分けて吹けたら、一流のE♭クラリネット奏者になれますよ!


さて、長くなりましたが私からの回答は以上となります。
特に(1)については、曲の場合はどうなるの?など他の疑問も出てくると思います。
リードや楽器の調整も関係があるかもしれません。
もし疑問質問感想等ありましたら、またご遠慮なくお返事くださいね。待ってます!!!

千葉友希(クラリネット奏者)



宮城県出身。宮城県仙台第一高等学校を経て、東京音楽大学卒業。第6回ヤング・クラリネッティストコンクールジュニアB部門本選出場、ザ・クラリネット賞受賞。第20回全日本高校生管打楽器ソロコンテスト全国大会優秀賞。第14回日本ジュニア管打楽器コンクール銀賞受賞。同時に入賞者記念演奏会出演。平成28年オーディション合格者によるソロ・室内楽演奏会に出演。
ウェーバーのクラリネット協奏曲第1番を仙台ジュニアオーケストラと共演。
ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2018第3位。第12回セシリア国際音楽コンクール室内楽部門第1位。
めざましクラシックス超絶技巧選手権出演。NHK「チコちゃんに叱られる」VTR出演。
クラリネットを菊池澄枝、三界秀実の各氏に師事。室内楽を四戸世紀、松本健司、亀井良信の各氏に師事。これまでにアンドレアス・オッテンザマー、フィリップ・ベロー、チャールズ・ナイディック、大島文子各氏を始め数多くのマスター・クラス、アカデミーを受講。


千葉友希 Facebook
https://www.facebook.com/yuuuki.chiba.5680899
Twitter
https://twitter.com/CYuuki_Clarinet




こんにちは。理想の音のイメージを持ち、そこに向けて努力してるのは素晴らしいこと。
それが上達への一番の近道ですから。
私はサックスが専門でEbクラの経験は殆どありません。
ですが、教える仕事を長くしている経験と、Bbクラ上達中だから解る想像力で回答してみますね。
なので、私もクラ専門の人から御感想と御指導を仰ぎたい「貴方の仲間」として書きます。

先ず「ポー」なんとなく判りはしますが「誰々のような音」とか「誰々が○○という曲の△△の箇所で出してるアノ音」といった具体例を挙げてくれると回答はより適確になると思いますよ。

次に、アンサンブルの中での役割に思いを馳せてみます。
例えばピッコロ。あの楽器はどんな場面でどんな使い方をされると効果的でしょうか?
Ebクラも同じく、クラ群の中で最高音域を担います。
譜面を書く人はナニを期待してEbクラを選ぶでしょうか?
その高音域は、鋭さと突き抜ける力強さがあって然るべきでしょう。
もちろん、ピッコロもそうですが、その低音域は、実際の音高は高くても輪郭に乏しいハカなさが特色で、それを使いたくて選ぶ場合もあります。

勿論そんなことは解っていての質問でしょう。
だとしたら貴方の悩みの「きつい音」とは「高音域になると響きが乏しくて細く頼りない音になってしまう」ということでは無いでしょうか?
そうだと仮定して続けますね。

結論めいたことから先に書いてしまいます。
貴方の使っているリード・MPにとって「丁度よい」加えるべき圧力を超えて噛み締めて、あるいは構え方で押しつけてしまってはいないでしょうか?

一般的な構え方とアンブシュアでは、下の歯の前面を支えとして、下唇はクッションとなります。
ですが、そのクッションは能動的柔軟であるとよいのでしょう。

どういうことかというと、歯前面の硬さを和らげるが、単に挟まってるだけのクッションだとすると、リードへの圧力の加減は、顎の力で位置特定をした硬い壁に楽器の角度次第で押しつけるのみとなります。
それだと、繊細な操作は難しいので音色・音高操作の柔軟性は損なわれます。
おまけに、長時間吹き続けると下唇が痛くなりませんか?
押しつぶされて血行が妨げられ硬くなった唇は、響きの乏しい硬く細い音の原因ともなります。

それを避ける為には、口周辺の筋肉群(口輪筋)の緊張を使って、下唇周辺を「スポンジのような単なるクッション」ではなく、適度な柔軟性と硬さを「丁度よく」保つのがよいでしょう。
その「緊張」とは、リードからの圧力で下唇周辺が押しつぶされっぱなしにならないように、歯から離れる方向に下唇周辺を支える持続的な力です。
位置を決めるための顎の力に加えて、その口輪筋の力とで、リードに丁度よい圧力を加え続けます。
そうすれば、押しつぶされて痛くなることもないし、音高・音色の操作にも「素早さ・柔軟性・繊細さ」を確保できます。
それが上に書いた「能動的柔軟」ということです。

さて、もう1つの結論めいた話。
リードの硬さを、1段階柔らかくしてみましょう。
学生吹奏楽の現場でよく見かけるのは、本人の筋力を無視した硬すぎるリード選びです。

能動的柔軟を実現するような筋力は、もともと誰にも備わっていません。
そこに硬すぎるリードを使わせると、顎の力と構え方とで、とにかくリードに圧力を加え、とにかく音を出すだけとなります。
そうなると、口輪筋を使ってリードへの圧力を操作しようという発想すら生まれず、とにかく噛み締め続ける癖がつきます。

その状態で、思いのほか柔らかいリードに付け替えると、リードはMPにペタっとクッツキ、息の通りは悪くマトモな音色とはならないでしょう。
リードへの下唇周辺の「押しつけ」を減らしましょう。
今までより押しつけずに吹けば、マトモな音色になるポイントが見つかるでしょう。

ところが、今まで固い壁に押しつけることで位置特定と状態安定を得ていたので、弱い押しつけの状態では、フラフラと頼りない吹奏感となるでしょう。
当然のことです。その押しつけ弱さでも安定を得る為の口輪筋が備わってないからです。

その状態から「始めて」、慌てずジックリと低めの音域で音造りのための基礎練習を繰りかえしましょう。
能動的柔軟を念頭に行います。
きっと、口輪筋の疲労を感じるでしょう。そうなればシメタもの。鍛え上げが始まってるということです。

疲れたら休む、それを回数多く繰りかえしましょう。
ロングトーンも無理に長くしなくてよいです。
タンギングせずに発音し、数秒ずつから始め、少しずつ長くしていけばよいでしょう。
タンギングせずに発音するという練習は、必要以上の圧力を加えないアンブシュアを身に付けるのに効果的です。

発音の瞬間にリードミスが起きない程に押しつけ無さ過ぎず⇔発音の瞬間が爆発的にならない程に押しつけ過ぎず、というバランスポイントを見つけましょう。

ちなみに、タンギングせずに発音できるというスキルを得るのは、適確なタンギングを実現するにも効果的です。

やがて口輪筋の強さが操作の繊細性とともに磨きあげられれば、リードを硬めにしてもよいでしょう。
そこに至るとリードの硬さの選択肢は拡がります。
柔らかくても硬くても使えるようになります。
すると、求める音色に応じて硬さやモデルを選ぶという可能性も拡がります。能動的柔軟の賜物です。

とはいえ、あまりにも柔らかすぎとか硬すぎだと、音程バランスを崩すし、硬すぎでは音色はボソボソし表現の幅も狭くなるので気を付けましょう。

…という発想は少なからず私がサックス奏者だからかもしれません。
クラ専門家からの声を私自身も参考にしたいと思っています。


ついでに、この質問を私に寄せてくれた編集部の方へ。
人それぞれに「目指す佳い音」はあります。
ですが、そこに至る為の物理的考察や実現のプロセスには、クラシック・非クラシックの奏者どちらとも違いは無いはず、だと私は思ってます。
若い人達には様々なジャンルの色々な奏者の音を聴いて、憧れの音色のイメージを育んで欲しいですね。

武田和大(サックス・フルート・クラリネット奏者)



'90年ボストンでジョージラッセルorch. に参加。帰国後はハモニゴン・サックス四重奏団クアドラ・Funk Orchestra TPO等でライブの傍らジャンルを問わず活躍。多くのアーティ ス トのステージや作品造りに関わりm-flo、Jazztronik等のアルバムで編曲と演奏が聴ける。B'z松本孝弘のグラミー受賞アルバムにも参加。東京キューバンボーイズはじめ幾つかのビッグバンドのバリトン奏者としても知られる。管楽譜・教則本など執筆多数。Act Against AIDS in 武道館に2001年から参加を続ける。【楽器forKids】代表とし て被災地の子供達の音楽活動継続支援を続ける。

武田和大 Official Web
http://kazudaiww.o.oo7.jp/
Twitter
https://twitter.com/kazudaiww






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