SIDE A
A-1 フォーダーリン
A-4 ドーナツショップのウエートレス

何の情報も、知識もないままに「とにかく聞いてみて下さいと言われて、その日のうちに大野方栄のカセットテープを聴いてみた。第一印象は悪くはなかった。と言うよりもその時興味を湧せたのか「もう一度聴いてみよう」と思ったのである。そして2度目。どこかで耳にしたメロディーだと思いながらまず一曲目を聞いてみたら、なんと、あの名曲"フォーブラザーズ"ではないか。いとも簡単に唄っているのでその驚きは倍増した。最初に曲がピンとこなかったのは、どうやら、キュートでカワイらしい声にあるようだ。ジャズのスタンダードナンバーを唄う女性ヴォーカリストが一時、ファッションのようにデビューし(今でも多少あるが・・・)人気を得たが、阿川泰子を除いて誰一人として自分のジャズを唄っていない。「皆、ジャズのものまねに過ぎない・・・」と常々、思っていたら、ここにもう一人、自分だけのジャズを唄っている歌手がいた。
それが大野方栄である。阿川君、同様、決してジャズを唄う声ではない。しかし、ジャズナンバーをジャズらしく唄っていない。彼女らしく唄っているから最高なのである。そして、もう一曲「ドーナツショップのウエートレス」。この曲は、いかにも彼女向きだとすぐに思った。決して僕だけではないだろう。と同時に「唄う事については、とても、器用な女性じゃないか」と思ったのである。典型的なB型らしいが、唄からも声からも、すぐに分るからおもしろい。
かく言う僕も典型的なB型である。(FM東京 青山悌三)


A-2 LA FEMME FATALE

リオの空港から海岸まで車で30分。冬だというのに、女たちは裸で黒マンジュウを焼いていた。日没、男たちは、モザイク・タイルで敷きつめた豪華な遊歩道を、鍛えだげた胸を黄金色に染めながら走る。とびかう視線、膨らむこ間、汗と臭いの潮マンジュウ売り。そんなバカを尻目に私は車をコパカバーナはパラスで右折し、原宿キンキラ通に似たイパネマの街を抜け、丘の頂上にさん然と輝く、リオで一番ステキなトコ、モーテル『ロイヤル』へ欲情した。(ブルータス 毛黒カツミ)

A-3 TAKE ME

日本のフュージョン界人気No.1グループ=カシオペアの代表曲。テレビやラジオ、あるいはスーパー・マーケットでも流れていた曲ですし、彼らのアルバム「スーパー・フライト」「アイズ・オブ・マインド」「ミント・ジャムス」の3作にも収録されていました。又、彼らのライブ・ステージでも必ずや演奏されてきた、リーダー兼ギタリストの野呂一生の名曲です。この名曲を、ここでは作曲者自身が率いるカシオペアのバック演奏で歌っているのですから、このアルバムの中でも最大の話題曲であるばかりか、大野方栄さんとて"グヮンバリマス"ですよね。さて、このタメの名曲(エネルギーとパワーをタメ込んだ曲という意味。カシオペアのファンが言っておりました)を聴いた大野方栄さんは、なんと一晩でこの歌詞を書き上げてきたそうですから驚きです。「ミント・ジャムス」での同曲と比べてみると、テンポは少し早めになっていますが、ほとんどオリジナル演奏のパターンで歌われています。野呂一生は、オリジナル演奏ではオクターブ奏法で難かしくせまっていたのですが、ここではシングル・ノートで、実にのびのびと自信に満ちたいい味のギター・ソロを聴かせてくれます。又、全篇に向谷実がイヤに張り切っているトビ・ハネ・ピアノのバッキングも聴いてやってください。ピアノ・ソロになると、これ、カシオペアの向谷さん?と言いたくなるほどの思い切った好プレイも聴きものです。何百回と演奏し続けてきたこの名曲に、やっと可愛らしい歌詞がついたのですから、彼らもさぞや嬉しかったのでしょう。大野方栄さんは後半で4声のハーモニーを一人でやっています。山下達郎とか吉田美奈子などもやっていますが、これは難しいのですよ。さて、この大野方栄さんの歌で歌詞を覚えたら、今度はカシオペアのオリジナル演奏の方をバックに(そう、カゲキにも御大カシオペアをカラオケ風にして)あなたが主役で歌ってみると、又、又、気分爽快です。(スイングジャーナル社 安藤和正)

A-5 さよならの風景

ウヘェーッ、オッドろいたネー。フツー、彼女くらいの経歴の持ち主がデビュー・アルバムなんかを作るとその殆んどがオリジナル作品で占めたがるもんなんだよネー。(マ、あたしはこれだけ才能豊かな人間でゴザイってことを全国的にひけらかすためにネ。)でもその割には2,3曲聴くともうウンザリ、なんてのがゴロゴロ。特に日本製のポップスはその手合いばかりで僕なんかは絶対にムシしてたもんネ。たまにオッ、イイナなんて思うと海の向こうのパクリでサ。ところがこのオジョーさんのアルバムと来たら、チョット違うんだナ。押しつけやクサい色気で自分の作品を聴いてもらうことよりクラシックからJAZZ、はてはシャカタク(何てこと!)までの幅広い既成ヒット洋楽に素ッ敵な日本語をのせて歌う方を選んじゃった。いい根性してるよネェ。しかもバックがテクニックでは折り紙付きのフュージョン・グループ、<カシオペア>でしょオ。やることがスマートだよネェ。こういうのを"アダルト・エンタテインメント(ポルノじゃないヨ)・ポップス"って呼んだらイイんじゃない?シンガーに徹した彼女の歌声もヒョーキンでコケティッシュ(ここがポイントよォ)だしサァ。今の時代にピッタリなんだよネー。毎日の目まぐるしい生活の中で1枚のアルバムに大衆が望んでいるのは音学(技量)ではなく音楽−ひとときの安堵と1カラットの夢−だってこと、彼女はデビュー・アルバムにして悟っちゃってるみたい。それにこの曲(INVITATION)の日本語タイトルが「さよならの風景」だって−おぬし、ヤルじゃん!でもストーリーはもっとキ・レ・イぶっても良かったんじゃないのォ?この曲の魅力と言ったら絶対にエレガント性しかないモン。とは言え、こうした企画は大賛成!今度、洋楽もんに日本語訳をつけるなんて楽しいコトをする時はゼヒ僕にもお手伝いさせてよネ。ンじゃまた。(自由が丘<SONGS>店主・川名雄二)

SIDE B

B-1 Eccentric Person Come Back to Me

「LOVER COME BACK TO ME」といえばオスカー・ハマンスタインの手になるJAZZの名曲。それを16BEATで演奏するだけのことなら何の面白味もないけれど、イメージ、詞の内容などほとんど原曲が何であるかを考えるひまを与えないほど個性的なこのセッション。これぞ、ジャズ・マインドとでも言うのかな。素材(エレメント)だけを共通語に、その上には完全に独自の世界をきずくという、当然のクリエイティヴ・マインドを現代のJAZZにとりもどさせるきっかけになるようなテイクである。(井上鑑)

B-2 朝のスケッチ

この曲も、このアルバムでバックを演奏しているカシオペアのリーダー兼ギタリストの野呂一生の新曲です。オリジナル演奏の方は、ベスト・セラーとなった「フォトグラフス」という彼らのアルバムのA面3曲目に収録されていた<ロング・ターム・メモリー>という曲。
物憂い感じを野呂一生が感傷的にフレットレス・ギター(実力あるギタリストしか弾けないギターですゾ)で、せつせつと泣いていたのですが、大野方栄さんは、この曲のデモ・テープを見つけるなり、テーマ・メロディーから向谷実のソロ・パートまでを歌にしてしまいました。冬の朝の桟橋、朝もやの中でよみがえる二人の愛と別れを少女心に綴るという、ステキなバラード曲に仕上げています。(スイングジャーナル社 安藤和正)

B-3 Xmasの夏

キャンプストアは天皇陛下のとなり組。戸塚ヨットは江の島で、サザンの桑田は、遙か茅ヶ崎。そうなりゃ海はオレのもの、ついでにお前もオイラのもん。就寝ラッパの音やむと、ムクムク動いた先輩達の下半身。そんなバカ尻目に、床はいだして、やってみましたランデブー。モーテル・ネオンがチラつくも、目指すは鎌倉、お披露山。慎太郎さんちのちょと上で、開いてみました君の脚。あんときゃ19でキミ20。烏帽子岩が3回泣いた夜だった。(ブルータス 毛黒カツミ)

B-4 個人教授

プロデューサーのTONY"PITCH"ARIGAの面目ヤクジョたるサウンド。佐藤さんのリリカルなピアノとストリング・アレンジがすばらしい。最近僕らの回りでも"ECMごっこ"がはやっていて、モーダルな音構成などに「リバイバル興味」がもたれているが、このテイクのもつクリアーさは特筆に価する。ただ、欲目をいえば、あまりにも美しくなりすぎてしまって、もっと歌い手のエゴがでていてもよかったのではないかとさえ思えるのである。(井上鑑)

B-5 人魚のサファイア

PICOさんは「くるみわり人形」が本当に好きなんだなあ。すみずみまで知りつくしている曲への愛情がふつふつと感じられるアレンジメントである。 グノーのアベ・マリア以来、すでにある曲にメロディーを新たに足すという試みはたくさんあったが、成功例は少ない。これは数少ない成功作の一つといっても良いのではないだろうか。(井上鑑)





ニッポン放送制作部 土屋茶々丸

 一時、ジャズのインストルメンタルナンバーに詞をつけるのが流行ったことがあった。マンハッタントランスファーが、ウェザーリポートの"バードランド"。笠井紀美子が、ハービーハンコックの"バタフライ"etc、皆な、素晴らしいジャズボーカルナンバーにはなったが、以外とこれがつまらなかった。何故なら、オリジナルのリード楽器の方が、はるかに表現力が豊富だったからだ。僕ば、そんな流行を忘れていた、今年の初春、たまたま、アルファの女性ボーカリストの話をしていた時、新人でものすごい女性がいることを聞いた。なんでも、アルファレコード社長の村井氏のデスクに置いてあったカシオペアのカセットなどを持ち出しては、歌詞をつけては歌っているという。そでも日本語で・・・。そうこうするうちに、彼女のLPができあがい、ラフミックスを聞かせてもらって、ビックリ!!ボーカルのお茶目さに圧倒されて、オリジナル(カシオペアやシャカタクのヒットナンバー)のバカテクっぽさがソフトに包みこまれ、全く別の曲になってしまっている。本人に会って又又ビックリ!!"味わい、触れあい、スカイラーク"のあのCMの声の女性ではないか。何とCMは、400本以上やっている、現代の天地聡子とのこと。どうりで、歌詞がキャッチ―で、ボーカル臭さを感じさせないと思った。その上、CM制作などのクリエイティヴな仕事もしているとは、クリエイターの鏡だ。歌も上手だし、文句のつけようがない。彼女のオールナイトニッポンでのおしゃべりの日も近いゾ!皆で応援しよう。


林真理子

 「コケティッシュ」という言葉がある。この言葉から、男たちは甘い、ふんわりとした女を思いうかべて、胸を騒がせているのであるが、大野方栄の歌は、まさに「コケティッシュ」そのものなのである。
 彼女の声は、とろりとやわらかい。これはふつう女たちが、恋人と二人きりの次巻に、その男のためにだけ出す声のはずである。それを彼女は堂々とLPにして、世間に発表してしまったのだ。
 これは「猥褻物陳列罪」に等しいぐらいの事件ではないだろうか。
 たぶんこれを聞く多くの人々は、それぞれの恋人の表情や声を思い出して、平静ではいられないはずだ。しかし、誰もがそれと同時に、なんとも言えない心地よさを感じるに違いない。大野方栄の歌は、朝のひかりの中で別れた恋人の姿なのである。いちばんさわやかで、いちばんかわいかった女の顔を、彼女の歌から人々は思い出すのだ。きっと。


ADLIB 松下佳男

 『ボーカルも、ひとつの楽器だ』ということは昔からよく言われている。
 サラ・ヴォーン、アル・ジャロウ、ケイト・ブッシュなど、確かにそういう感じを強く受けるボーカリストはいるものだ。
 大野方栄の歌を初めて聴いた時、ボクはそんな感じがした。
 そして、好きなサウンドにインスパイアーされると即興ですぐに詞をつけてしまうという面白い才能は、『歌はあくまでパーソナルなものだ』というボクの主張を充分に満足させてくれるものだ。
 新しい"個性"の誕生のルーツは、ナチュラルで、やさしいサウンド!!
 そんな中から生まれた彼女の歌を、ボクは"THE VOICE EMOTION"と呼びたいのだ。なぜなら、エモーションはナチュラルなサウンドにあってこそ生きると思うから・・・・・・。


大野雄二

 彼女と初めて会ったのは、4年前のニッスイ・チクワのコマソンだった。予算がなかったため、人づてにより彼女の起用となった。正直言って当初は不安だったが、意外にも彼女の実力は我々の期待を大きく上回り、上々のデキ。その後は、よきパートナーとして豊かな感性を余すところなく発揮してくれ、"ほめられちゃったのワタシ"他、快調なヒットを飛ばした。(なんと、彼女は400曲も歌っているそうだ!!)そして、ある日、オリジナルの詞"フォーダーリン"を見せられた。私としても、こんなユニークかつオリジナリティ豊かな詞に、今までお目にかかったことがなかった。ただ、ただ脱帽!!今度の完パケを聞いたが、唄も数段上達したし、全体にスムーズで、フリーな印象を受けた。それにしても、デビューアルバムでカシオペアをバックに歌えるなんて、なんて贅沢なんだろう。最近、洒落っ気たっぷりのゴキゲンな曲が少なくなった中で、唯一、大人も楽しめるレコードといえそうだ。無論、僕にとっては"愛聴の一枚"となること間違いない。MASAE、最高のデビューおめでとう!


Jazz Life編集長 内藤遊人

 彼女は早い話、ボクらがかつてよく聴き親しんだ、例えばウディ・ハーマンの「4ブラザース」やウェス・モンゴメリーの「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」スタン・ゲッツの「恋人よ我に帰れ」などをテーマからソロからコピーし、日本語の詞をのせて歌う。このフィーリングは、まさしくジャズである。彼らのソロを唄っているからジャズだ、というのでは決してない、気持ちが重要なのだ。  すてきだ、のあとに軽くビックリマークを3つほどつけて拍手。
 ジャズ・ヴォーカルというものは、日本ではずいぶん誤解されていて、極端な場合、英語でいわゆるスタンダード・ソングを唄えばそれがジャズ・ヴォーカルである、なんて受け取られているような風潮さえあるが、もちろんこれは違う。なにもスタンダード・ソングを歌わなくても、あるいは英語で歌わなくてもジャズ・ヴォーカルたり得る。そのあたりは、このすてきな新人、大野方栄の歌を聴けばわかる。


山口文憲

 ながいことファーストアルバムを待ったかいはあった。大野方栄のあの不思議な地声とよく転がる節まわしをたっぷりと聴いて、こんどこそよくわかったという気がする。やはりあれは、本人がどういおうと、まぎれもなく閩劇−福建オペラの歌姫の唱法なのだ。これはもう私がそう決めてしまったことなので苦情は受けつけない。
 三年前のことだ。私が書いた香港ばなしの本に、はげましのお便りというのをくれた少女がいた。大の香港マニアで、商売は歌手。おまけに彼女は、ワタシは25パーセントだけチャイニーズです。と書いてきたからもうたまらない(?)。私はかなりコーフンして、会いに出かけた。そして、その顔立ちをひと目見て、こりゃ上海人の血だ、と思った。ところが大陸から来た母方のジイさんというひとは、じつは福建人なんデース。と彼女はいうのだった。
 そうか、福建人か!以来私は、明け方に腹をすかせて近所の「すかいらーく」に出かけるたび、店内に流れる大野方栄のコマソンに耳を傾けた。台湾海峡の波の音や厦門(アモイ)の街に吹く風の声が、聞こえてきはしないかと思ったからだ。しかし、いかな私の強引な耳をもってしても、それらしい気分をつかまえることはできなかった。
 だから私は、アルバムを心待ちにし、そしていま、ひとり勝手にうなづいている。まったく大野方栄は最高アル!


赤塚不二夫

 僕がタモリと初めて出会った時、全身に(可也酷い風邪の前兆にくる、激しい悪寒の様な)電気が走った。"こいつぁ天才だ"って、瞬時にして僕は悟ったね。
 これは、ボルテージが異常に高い天才だけが持つ、本能的なヒラメキなんだけれどね。
 あれから久々10年振りに、僕は再びすっかり諦めていたエクスタシー体験をしてしまったのだ。ニャロメ!大野方栄は超Aランク級の天才だよ!僕は彼女にすっかり度胆を抜かれて、廃人になりそうなのだ!これ以上オジサンを翻弄したら、死んじゃうんだから。なんちゃって!


高平哲郎

 ジャズのアドリブに歌詞を乗せることは、向うでもあるけれど、これほど見事に自然に日本語がハマっちゃったのは、やはり本邦初の出来事に違いない。しかもそれが日本語なのに日本語っぽく聞えない。それでいて、日本語ポップス全盛の頃の妙ちきりんな英語っぽい日本語と違って、よーく聞いてみるとちゃんとした発音の日本語なのだから凄い。で、凄いついでに言ってしまうと、唄い方がなんとも雰囲気があって、これがまた凄い。それが新種の歌手・大野方栄さんである。
 大野さんのデモ・テープを、ぼくはかなりの数の友人に聞かせた。誰もが驚いた。こうやって仲間にテープを聞かせたことが前にもあった。いづれも無名当時のタモリ、所ジョージ、ツービートといった連中で、そういう連中のいまを思えば、ひょっとして・・・・・・。でも、大野さんは、ひょっとさせるような根性があると言い切る。演歌歌手でもないのに、根性を売り物にするのも大野さんの面白いところだ。





大野方栄アルバムの楽曲マニュアル

SIDE:A
For Darling
原曲はウディ・ハーマン楽団の2ndハード時代の名曲"Four Brothers"。スタン・ゲッツ、ズート・シムス、アル・コーンたちの名アドリブにそのまま歌詩をつけて歌ってしまう。この詞は彼女の結婚願望を表わしたものという。前半は軽やかに4ビートにのり後半は4声のハーモニーを一人で多重録音、まずは聴く人を圧倒する。野呂君たちは生まれてはじめての4ビートに挑戦。そしてさすがに見事にこなしている。

Le Femme Fatal(仏語 The Fantastic Woman)
原曲はミシェル・ルグラン作曲"Watch What Happens"。CTIレコードの名盤"A Day In The Life"より。ウエス・モンゴメリーのオクターブ奏法のアドリブのすみずみにまで詞をつけて歌っている。ニュー・ヨークのブロードウェイを囲んで、このようにオーディションを受けるダンサーのたまごがたくさんいる。

Take Me
カシオペアのアルバム"Super Flight"の代表曲。後半は4声のハーモニーを一人で多重録音。カシオペアのオリジナルとは、またひとつ変わった面白味が出ている。

ドーナツ・ショップのウェイトレス
滝沢洋一君(HI-FI SETの"メモランダム"、サーカスの"ワンダフル・ミュージック"、"六月の花嫁"等作曲)のオリジナル。ミュージカル仕立のこの楽曲は大野方栄によく似あう。

さよならの風景
原曲はシャカタクの"Invitation"。野呂君たちはやはりシャカタクよりうまい。大人の女の恋を演じる彼女の心の中が手にとるようにわかる。このように既製の楽曲を使いながら彼女独自の世界をつくりだすオリジナリティーには、すばらしいものがある。

SIDE:B
Eccentric Person,Come Back to me
原曲はオスカー・ハマースタインJr、シグマンド・ロンバーグの作品"Lover,Come Back to Me"。スタンゲッツの名演をもとにしている。もちろん彼は4ビートで演奏しているが、ここでは16ビートで演奏。MC-4と彼女とのアドリブのかけあいが迫力満点。詞の内容は決して明るくないのに、彼女の手にかかると不思議に暗い感じはしない。

朝のスケッチ
カシオペアのニュー・アルバム"Photographs"の中のきれいなバラード。彼女は"Photographs"のデモ・カセットの中からこの曲を見つけ、さっそく詞をつけた。だから1コーラスの終から歌う彼女のパートは、デモ・カセットの中の向谷君のソロ・パートだ。

Xmasの夏
滝沢洋一君のオリジナル・過ぎ去った夏をいま暖炉のまえで見つめている。何でもない内容だがきれいでさみしい。

個人教授
原曲はボサノバの名曲、アントニオ・カルロス・ジョビン作"Desafinado"。ここではガルコスタの演奏をもとにしている。

人魚とサファイア
チャイコフスキー作曲、組曲くるみ割り人形の"あし笛の踊り"に合わせてカウンター・メロディーを作曲し、原曲に合わせて歌うと、カウンター・メロディーが主メロとなり、原曲がバックにまわるという面白い現象が生まれる。この曲のみ樋口康雄氏作・編曲・演奏(YAMAHA DX-7で3声のフルート、コントラバス、ベル、コール・アングレなどのパートを演奏)。そこにストリングス、フレンチ・ホルン、ティンパニーをオーバーダブした。エンディングに"花のワルツ"をつけてある。





"ティファニーで朝食を"の主人公ホリーゴライトリーは、素敵な自由人でした。アパートの表札に"ホリー・ゴライトリー"という名刺を貼っていたのだけれど、自分の名前の下にも「is traveling」と小さく書いていたのが印象的です。心が常に旅をしている夢多き人生も悪くないと思いませんか?生まれて初めてこのアルバムを出す事になり、私もそんな人生の第一歩を踏んでしまった様な気がしています。さてこのレコードは「Artは常に一貫性がある」と信じている私からの音楽の贈り物なのです。皆様に喜んでいただけたら幸福です。最後に素晴らしいmusicianと、心あたたかいスタッフの人々に合掌!
大野方栄



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