2001年からユニット"Melting Holidays"、通称メルホリで活動してきたササキアツシさん。
最近、新ユニット"ポプリ"をスタートしたばかり。
このユニットの武器はササキさんのクオリティ高い音楽性と、れいなさんのキュートなヴォーカル、それだけではない、いろいろな可能性に満ちており、実に今後が楽しみなユニットなのだ。

ポプリという名前の女の子のキャラクターをメインに据えたコンセプトが新鮮。
曲作りやイラストなどアートワークも、ササキさんとれいなさんのお2人で行っている。
今回は、ササキさんとれいなさんにポプリについて、そしてお2人それぞれの音楽ヒストリーについてインタビューさせて頂いた。
ササキさん、れいなさんそれぞれに描かれたイラストをたくさんご提供頂いたので、インタビューを読みながらぜひポプリの世界をたっぷりお楽しみ頂きたい。 (2016年3月)




---ポプリ結成のきっかけと経緯について教えて下さい。


れいな:…うーんなんだったかな…?(笑)
なぜか、なぜ結成されたのかがお互いとてもあやふやなのですが…多分私の、些細な希望であり、個人的な目標的であり…とても私利私欲的な事であった気がします。
憧れてたバンドイベントに出てみたい、だとか、インディーズでいつかCDが出してみたい、だとか。
そんな夢をササキさんにぶつけてるうちに、いつの間にか何か一緒にやろうってことになってましたね。


ササキ:れいなさんと2015年初頭頃にいろいろ漠然と計画の案を出し合って、この二名の力を出し合えば良い物が作れるかもと思ったことでした。
れいなさんのやりたい事や夢が実現できるようにしたい、この才能を世に紹介したいという気持ちがありました。
わたしとしては、れいなさんの独特のかわいいアレンジセンスと特技のイラストは武器になると思っていました。
それを踏まえつつ話し合いをして、ポプリの活動スタイルは整っていきました。









---デモ音源2曲を聴かせて頂きました。
「しろのふわふわ」は、メロディーが耳に残り明るく楽しい気分になりますね。
れいなさんのキュートな声が素敵です。
「わたしの名はポプリ」は、何か新しい物語が始まりそうで、今後の展開に期待が高まります。




れいな:ありがとうございます…!
「しろのふわふわ」は、ポプリのバンドのメインキャラクター"ポプリちゃん"が、気がつくと迷い込んでた世界で最初に出会う白猫、"サシェ"目線で書いた曲です。
仕事中の空き時間にサビのメロディが頭に思い浮かびまして、家に帰ってもずっとメロディが頭の中にいたので…そのまま採用しました!

ササキさんがポプリを結成するにあたって、ショートストーリーみたいなのを描いてくれたんですが「わたしの名はポプリ」はササキさん作曲ですので、まさにそのストーリーをなぞったような、ポプリが綺麗な街並みの世界に迷い込む話ですね。
そしてわたしが書いた「しろのふわふわ」は、それを参考に、「誰か迷子が来たようね」とサシェが少し偉そうに(笑)、ポプリを街へ案内するイメージで歌詞を書きました。
好奇心旺盛なポプリと、どこか偉そうで姉御肌なサシェの不思議なコンビです!(笑)

あとはわたしが白くてふわふわした生き物やぬいぐるみが好きだったので、そういった個人的な趣味的な要素も詰まってますね…!
まだポプリ名義では今の段階で曲は多くないですが、CDとしてまだ頒布されてないけど完成済みの音源や、これから作りたいものやりたいことも、まだまだ空想中です!





ササキ:「しろのふわふわ」はれいなさんのエピソードにもある様に、「わたしの名はポプリ」の歌の中での出来事をもう一方のキャラクターである猫の「サシェ」から見たストーリーです。
「わたしの名はポプリ」は曲を作る前に、れいなさんがデザインしたキャラクター「ポプリ」と「サシェ」の出会うシーンを、まずプロットとして短い小説のようなものを書きました。
そこには街の風景や夕暮れや二人の出会いが書かれていました。
それでかなり情景が浮かんだので自分でもイメージボードの絵を10枚程描いて、世界が出来てきたところで作曲に入りました。

しばらくブランクがあったので幾つか曲作りの課題みたいなものも設定して、モチーフとして一瞬だけ好きな曲のリフの要素を取り入れたり、キーをメジャーとマイナーで半々くらいに混ぜようとか。
マイナーキーで作るのは苦手なので練習になりました。
曲調はやはり心の底にソフトロックがあるので、それは土台にあります。



---ポプリは、キャラクターがメインという珍しいコンセプトですね。
どのように思いついたのですか?ポプリの名前の由来も教えて下さい。



れいな:わたしのお友達のシンガーソングライター、chiepommeちゃんが、自らの音楽のイメージキャラクターを作って活動しているのですが、そのキャラクターがとても可愛くて羨ましくて、私もせっかく絵も描けるので、なにかキャラクターのいる音楽を展開していけたらいいなーと思ったのがきっかけですかねー!

さらさらっとラフを描いてササキさんに送りつけましたね。
絵を描いて曲を作ることなら私1人でもササキさん1人でもできることだと思うのですが…
2人で同じキャラクターを中心に、好きな角度から特に細かな設定に縛られることなく世界観を自由に空想して曲を作ってます。いろいろ自分じゃ思いつかなかったものや風景が見えてきて、面白いです!

ポプリの名前のきっかけは…響き重視ですかねー、あと私がとてもお花が好きなので。
お花や、ポプリというオシャレ雑貨をモチーフにしただけで、なんだかイメージがいろいろ湧いてくる気がしますね!





ササキ:キャラクターの造形やデザイン、名称はれいなさんに一任しました。
出来あがってくるものは確実にいいものだと確信がありました。
最初、案としてちょっととぼけた感じのファンシーなものだったりしたんですが、れいなさん得意のゆるふわ美少女モードのポプリが実はかなり気に入ってます。



---音楽のみならず、イラストもお2人とも描いているのがまたいいなぁと思いました。
アニメになって動いたら可愛いでしょうね。



れいな:わたしは物心ついてからずっと絵を描いてましたねー。
ササキさんも昔から絵を描くのが好きと聞いてましたが、最近は特に驚くほど上達されて、それもわたしが描けないような背景や建造物をスラスラ描くのですごいです。
そういった意味でも、同じお絵かき好きでも描くものが違ってて刺激になりますね。
アニメPVを作る企画も実は考えてたので、いつか時間があるときにぜひ作りたいですね。
動かしたいです、ポプリの世界を。


ササキ:いつか絶対やりたいのは、映像付きで動画をあげることです。
映像込みでこそ、ポプリの真価が発揮出来るかと思ってます。









---ここからはササキさんの音楽ヒストリーについてお聞かせ下さい。
子供の頃、いつから音楽に触れるようになりましたか?楽器歴についても教えて頂けますか。



ササキ:小学生の頃は合唱と吹奏楽を少しやってましたが転校先ではやらなかったのでそのまま遠ざかりました。
肝心な思春期はオタク少年として費やしたので音楽はあまり関心を持っていませんでした…。
この貴重な時期を逃したのは未だに大きな損失です。

高校の時に出来た友達に何人か音楽をやってる人がいて、中でも80年代テクノ好きだった友人から打ち込みの存在を教えてもらいました。
最初から楽器演奏ではなくて打ち込みで曲全体を構成する魅力に取り付かれました。
そしてバイトして機材を集めていきなり作曲を始めました。
最初は8小節くらいの短い曲しか作れませんでしたが、自分で作れたという喜びが、その先へと進む原動力になりました。

楽器の演奏はギターでコード弾くのが精一杯です。
もっといろいろ出来るようになればもう少しアレンジの引き出しも増えるだろうと思うのですが、なかなかこの適性があまり無くて、練習と努力の力が足りないようです。



---ササキさんの音楽は、Melting Holidaysでも、小林しのさんのアルバムでも、 アレンジやサウンドがとても美しくて魅力を感じています。
その音楽性はどのように培われたのでしょうか?



ササキ:作曲を始めて程なくしてまずハウスを知り、そこから「東京は夜の7時」でもっとディスコ的なものに出会い、雑誌「サウンド&レコーディング」等で渋谷系というものがあることを知り、この辺りのアレンジがとてつもなく心に刺さって、まず同時代周辺ジャンルを収集して、最終的には元ネタ探しの旅がはじまりました。

90年代の一時期にソフトロックばかりアナログで収集していました。
そこでどんなアレンジなのか雰囲気を学びました。耳コピーして使用楽器の構成とかコード進行、定番的な転調の仕方とかです。
サウンド的な事に凝った時期もあって、ドラムループの切り刻んで加工とか、エフェクターでわざと汚い音にしてみたりしました。
それとわたしに多大な影響を与えたのは、ユメトコスメの長谷さんです。
レコードの情報はMelting Holidaysの田阪くんが当時レコ屋の中古担当だったのでいろいろレアな音源とか教えてもらいました。







---Melting Holidays(メルホリ)について、始めたきっかけを教えて下さい。


ササキ:かなり忘却の彼方ですが、2001年春、当時一緒にDJイベントをしていた仲間の竹本さん(メルホリ初代ボーカル)が別のユニットに参加したのでデモを聴かせてもらったらすごく良い歌だったので、ついでにこっちで僕と別の活動やりませんか?とスカウトしました。それが始まりでした。



---日本のギターポップ/ネオアコシーンについてどんな思いを持っていますか?


ササキ:わたしは常にギターポップ周辺の外周部にいたと思います。
90年代はただただ雲の上の別の世界だと思ってました。
自分はギターはあまり弾けないし、人前に出るのも苦手で、クラブもライブハウスもビビッてあまり行かれませんでした。
一緒に行ける友達も後に出来るのですが、メルホリをリリースしてくれたsucreレーベルもギターポップからは遠い雰囲気でした。
でもなんだかキラキラして眩しいあの世界に少しでも関わりたいと思い、ブルーバッジレーベルだけはなんだか勇気を振り絞って「メルホリもコンピに誘ってください!」と自ら直訴したのが、過去最大の積極的接近でした。
同じ頃my charmからも声をかけてもらえて、この2005年頃が自分とギターポップの貴重な邂逅でした。
それから最近はGPR(ギターポップレストラン)レギュラー出演の皆様、大好きです。







---ここからは、れいなさんにお伺いします。
れいなさんは子供の頃や学生時代に、どんな音楽を聴いて育ちましたか?



れいな:ジャンル問わず色々聞くのですが…基本的に、アニソンと萌え電波ソング、そして吹奏楽とクラシック音楽で育った気がします。
ルロイ・アンダーソンやスコットジョプリン、ヨハンシュトラウス等、クラシックとポップスの間のようなキャッチーさを持った音楽を求めて色々聞いていた気がします。
吹奏楽部に入ってた時も、周りの吹奏楽部員と比べると私は作曲家の名前を逐一覚えたり、いろんな曲を好んで聴きこんでた吹奏楽オタクみたいなところはありましたね…。
萌え電波ソングに至っては、テンポが早くノリが良く、そしてかわいい、いわゆるロリ系ボイスの女性ボーカルが乗ったものが特に好きで、成人する前から成人向け萌えゲームの音楽をよく聞いていました(笑)。



---音楽活動をするようになった経緯を教えて下さい。


れいな:音楽活動は、しっかり作曲を始めたのは大学からだったのですが、それまでも独学でフリーソフトで曲を作ったり吹奏楽の曲を耳コピをして、着メロにしたりしてました。
パソコンに触れる前も、幼い頃からしょっちゅう頭の中で音楽を作って遊んでいた記憶があります。
作曲以外の活動で言いますと中学から大学まで10年間吹奏楽をつづけてました。
ササキさんに、大学卒業したらフルートをやめるのはもったいないと推されて、中古で安いフルートを購入しました。
おかげでポプリでもフルートが活躍してくれてます。



---れいなさんは、ポプリとは別にどんな音楽活動をなさっているのですか?


れいな:数年前までは、ボーカロイドを使用した楽曲を作ってて、ササキさんとも共に活動させていただいてきたのですが、ここ最近は自分のできることをすべて詰め込んだ作品が作りたいと思い、自分で作詞作曲編曲し歌を歌ったシンガーソングライター的活動に加え、絵や動画制作、フルートの演奏など、とにかく視覚的にも聴覚的に楽しめるものが作りたい、と思ってます。
音楽という活動範囲にとらわれず、自分にできることならなんでもやりたいので、実写動画や手芸や、写真に楽器に…ダンスでもギターでも、何にでも飛びついていきたいと思ってます。
過去に自費出版で、オリジナルケースとブックレット付きのCDを出したりしました。
これからもなにかユニークなアイデアに満ちた創作活動をしていきたいと思っています。








---このWEBマガジン恒例の質問です。
ポプリのお2人にとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?



ササキ:これ!とひとつに絞るのは難しいですねー。
元気が出る、という感じでは無いですが、構造を探る度に新たな発見と意欲を与えてくれる。

astrud gilberto/Summer Sweet


れいな:うーーん!!気分によって変わるものなので難しいですね…!
最近でいうと、「私がなりたい私」の理想像にぴったりだと思った曲は、TWEEDEESの「月の女王と眠たいテーブルクロス」です。
キラキラしてるのに芯がしっかりしてて、歌詞の中身はふわふわと浮遊感があって、ロマンチックで魔法のようで、どこかずるがしこくて。

あとは…自分の曲でしょうか。
聞いてて未熟だと落ち込むこともあるのですが、やっぱり自分が積み重ねてきたものを聞くと時々とても励まされる気がします。
やっぱり自分の作品は自分の塊ですから、ウンウン、と共感するものが固まってるからでしょうかね。







---ササキさん、れいなさん、それぞれに今後の抱負や展望などを教えて下さい。


ササキ:当初の目標はGPRに出る!CDをリリースする!でした。
このうち思いもかけずGPRは叶ってしまったので、CDですか。うーん。これは自分レーベルで同人的にやる方法、もしくはディストリビューター経由で店頭やAMAZONなどに取り扱ってもらう方法、どこかリリースに興味を持ってくださる方がいれば相談したいところですが、まだ音源も少なく、プレゼンするにももう少し財産といえるストック曲を増やしたいです。
あとは映像と絡めた作品発表をweb経由でしたいです。


れいな:私1人でも絵と歌と音楽で自分の世界を確立させる活動をこじんまりとしているのですが、ポプリではまた違った世界が広がりそうな予感がしていて、ゆっくりですが育てていきたいなと思っています。
ポプリちゃんもまだまだ歩き出したばかりなのですが、ゆくゆくはもっとみんなに愛されるように、もっとキャラクターとして、勝手に動き出してくれるくらい命を吹き込んであげられたらな、と思います。
絵も音楽も楽器も、私とササキさんは自分がでできることを全部やりたい、という欲求が似てるので、お互いにできること、お互いにしかできないこと目一杯ぶつけ合って何か面白いものが生まれるユニットになってくれたらな、と思っています。



---どうもありがとうございました。今後のポプリの活動をますます楽しみにしております。



【編集後記】
お2人とも音楽を作り、イラストも描かれて、さらに物語を感じさせるコンセプト。
多才ぶりと行動力が凄い!と驚きましたし、お話を伺って創作の秘密というか、コツコツ積み上げてきて今があることが伝わってきました。
ポプリの動画の実現も楽しみです。






ポプリ プロフィール

ササキアツシ:
高校生の頃打ち込みで曲を作り始める。
2001年、melting holidays結成。アルバム3枚をリリース。
2015年、ポプリ開始。


れいな:
物心ついたときから絵を描きはじめる。
ホルン3年、フルート7年、吹奏楽歴計10年。
作曲は大学時代から始める。
2011年、ボーカロイドを使用した楽曲をニコニコ動画に投稿し始める。
2013年、編曲を担当した楽曲「きょうもしあわせ」がテレビアニメ「俺の妹がこんなにかわいいはずがない。」7話のエンディングとして公募採用される。



ポプリ告知サイト
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SoundCloud
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Twitter
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