高口大輔 インタビュー



今回はthe Sweet Onionsのメンバーとしての活動はもちろん、様々なバンドやシンガーのサポートミュージシャンとして、サウンドプロデューサーとしても活躍し続けている高口大輔さんが登場。
2016年1月には、小林しのさん『Looking for a key』特集でもトータルサウンドプロデューサーとして、アルバムのサウンドやアレンジについて語って下さったが、今回は高口さんご自身の音楽人生、the Sweet Onionsやサポートミューシャンの活動について、じっくりお伺いした。(2016年11月)


---the Sweet Onions(以下オニオンズ)に加入したきっかけを教えて下さい。


高口:オニオンズの前にも学生時代に渋谷系的なバンドをやっていたんですがそれが解散してしまい、スリーピースのロックバンドやってみたりファンクやってみたりしたんですけど、やっぱりポップスがやりたいと思っていたところにオニオンズのデモテープに出会いました。

演奏は拙いんだけど近藤(健太郎)さんの書く曲がすごく良くて、テープを聴きながら自分がこのバンドに入ったときのことを想像していました。最初に会ったのは、新宿の高島屋に入っているパパスカフェだったのを今でも覚えています。
思い出すとすごく偉そうな態度だったと思うんですけど、心の広いメンバーの皆さんが加入を認めてくれて、今に到ります。

たしか23歳の時で、社会に出て大人になりかけの頃でしたので、未だに「大人になってから始めたバンド」っていう意識が残っていますし、周りからも「オニオンズは大人だね」って言われることが多かった気がします。実際は全然そんなことないんですけどね。


---高口さんにとって、オニオンズはどんな存在ですか?


高口:人生の基盤となっている存在です。
仕事を持ちながら音楽活動をするというスタイルがずっと続いているわけなんですけど、そういったスタンスをメンバー同士お互いに認め合いながら進めることができていることが一番大きくて、自分の中での年表でも、この時期は仕事でこんなことをしていたというのと同じくらい、バンドでこんなことやってた、という事柄が時系列で記憶されている感じです。
音楽活動をする上でオニオンズが一番素直な自分を出せる場でもありますね、当たり前ですが。


---最近はライブでサポートミュージシャンとしての活動も多い高口さん。
具体的にはどんなアーティストのサポートをしているのですか?



高口:小林しの、the Caraway、humming parlour、Ricarope、spaghetti vabune!のライブサポートやゲストミュージシャンとしての参加をしてきました。
かつては、小林しのちゃんの前身バンドのHarmony HatchやMaybelleやPatrasche、刈間哲司君といった人たちのお手伝いもさせてもらいました。

あとはブリットポップのカバーバンドやったりファンクバンドに入れてもらったり、ボランティア活動で弾き語りしたり、色々やってきました。
イベントでの即席ユニットなんかも入れると、もっとあると思います。
色々やりすぎているのと、すぐ過去のことを忘れてしまいがちなので、いつも「この曲一緒にやったじゃないですか」と周りから呆れられます。


---ご自身のバンドでの演奏と、サポートでの演奏ではどんな違いを感じますか?


高口:演奏においては、違いはないです。どんな場面でも、自分が楽しめるポイントを探すのが好きです。その時々でどのパートで参加するかが違いますし、毎回新鮮です。

ただ、ゲストプレイヤーとして参加するときとバンマスとしてまとめるときには若干気持ちの上での違いはあります。
バンマスのときはどうしても全体をまとめるほうに意識が行ってしまってプレイがおろそかになりがちなので、そこが今後の改善点ですね。
プレイヤーとして参加したときにも、つい全体に口を挟みたくなるのも今後の改善点です。


---ここからは、高口さんの音楽ヒストリーについてお伺いします。
幼少時からピアノを習っていたとのこと。 やはりクラシック曲から音楽を好きになっていったのでしょうか。 子供の頃、どんな音楽を聴いて育ちましたか?



高口:母が声楽家なので、年末は母がソリストとして歌う第九を聴きにいくし、親と一緒にオペラや演奏会に行くような子供時代でした。
ピアノも子供の頃からやっていたので、自然とクラシック音楽に接していました。

あとは通っていた小学校で、登校時にも掃除の時間にも下校の時間にも常にショパンの曲が流れていて、自然とショパンの曲は体にしみこんでいたように思います。なので今でもピアノを弾くときは、ショパンを弾きたくなります。
あとはドヴォルザークやメンデルスゾーンなどが好きでした。
壮大なオーケストラものよりは、ピアノ曲やベートーベンの「春」のようにバイオリンとピアノだけ、といった小編成の音楽が好きでしたね。

あとはテレビから流れる歌謡曲も好きでした。
祖母がいうには、台の上に乗って西城秀樹のYMCAを踊りながら歌っていたらしいのですが、全く記憶にありません。
それから、リチャードクレイダーマンやポールモーリアなどのイージーリスニング系や、ポールアンカ、ドリスデイなどのアメリカンポップスなんかも好きでした。


---高校では、軽音楽部に入部されたとのこと。その頃ベースやギターも独学で弾くようになったんですね。
どのように独習していたのですか?



高口:思春期の男子にありがちな、自我が芽生えるとともにラジオを聴き始めてロックを知り、ピアノなんか習ってるのかっこ悪い!ギターが弾きたい!っていう動機で、入部しました。
そしたら部室にドラムセットが導入されて、遊びで叩いているうちにドラムの楽しさを知った感じですね。

ドラムに飽きるとギターを弾いてベースも弾いて、好きな曲の全パートを自分で弾くというのがだんだん快感になってきて、個々の楽器のテクニックを磨くよりも、それぞれの楽器のおいしさを追求する感じになっていきました。もともと飽きっぽい性格っていうのもありましたし。
今、色々な楽器を演奏するのが好きなのも、そこが原点になっていると思います。

ピアノが原点にあるので、ギターやベースにしても、この音階をどうやって弾けばいいのかさえ頭に入ってしまえばすぐに弾けるようになりました。
ドラムだけはそういうバックグラウンドなしで新しい領域だったので、一番楽しかったです。
クラシック音楽になくてポップスやロックにある最大のものといったら、リズム楽器ですからね。


---大学でも音楽中心の生活だったそうですね。 どんな大学生活を送ったのですか?


高口:メンバー募集で知り合った社会人のメンバーと組んだバンドでの音楽活動がメインで、その次にバイトが大事で、その次にやっと大学の授業かな?っていう、バンドやってる文系大学生の典型のような毎日でした。

一方で「大学はストレートで卒業しなければならない」「きちんとした会社に就職しなければいけない」という思いは常にあったりもして、色々やりつつも堅実志向だったと思います。
父がサラリーマンで母が声楽家だったので、二人のいいところを両方学ぼうとしていたのかもしれません。


---オニオンズに加入して、日本のギターポップ/ネオアコシーンに関わるようになったかと思いますが、このシーンについてどんな思いを持っていますか?
そして、これまでに多数のイベントなども出演されてきた高口さんですが、印象的なエピソードや想い出などご披露頂きたいです。



高口:このシーンに関わるようになったのは、インターネットが普及し始めた90年代終盤からでした。
各バンドがホームページに趣向を凝らす一方で、カセットテープを配布したり、ファンジンを作るような方たちがイベントを企画してくれたりする、デジタルとアナログ両方から盛り上がっていったシーンだったと思います。

そして、イベントを企画する人、コンピを作る人、お客さん、ミュージシャンといったいろいろな立場の人がいるんだけど、みんなが同じような目線で楽しみを共有しあうような形がこのシーンの特色だと思います。
それが閉鎖的にみえてしまう一面もあるんですが、同じような音楽を好きという者同士が触れ合うことによる楽しさが大きいのかなと思います。

長くやっているとお客さんの質が少しずつ変わっているのも感じていて、昔はみんな直立不動で静かに音楽を聴きに来るといった雰囲気だったのが、バンド側が熱い演奏をするとお客さんからその分レスポンスが返ってくるようになったのかな、というのがここ最近の印象です。

演奏する側としても、昔はクールにやるのがかっこいいと思って「これはやっちゃダメ」っていう暗黙の決め事が多かった気がしますけど、最近はそのあたりの変なこだわりがなくなってきて、素直に自分を出せるようになってきたかなと思います。


---このマガジン恒例の質問です。高口さんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?


Hiatus Kaiyote


高口:最近お気に入りのバンドです。
インタビューの中でも少し触れましたがロックやポップスはリズムだと思っていて、一方でリズムのバリエーションには限りがあるなと薄々思っていたところに、ハイエイタスカイヨーテの音楽は、リズムやコード進行をザクザクと解体しているように聞こえるのに心地よい音楽として成立していて、頭の中で鳴っている音楽を素直に表現しているんだろうなと思わせる作曲スキルの高さもあって、とても好きです。


---音楽活動において、今後の展望、夢などを教えて下さい。


高口:この間近藤さんと、人生って本当に短いよねという話になって、次のアルバムタイトルは「Life is Short」にしようか、なんて冗談を言っていました。(セカンドアルバムのタイトルが「Life is Beautiful」)
本当にそう思うことが最近多いので、今できることを楽しみながらずっとやっていきたいなと思います。


---どうもありがとうございました。オニオンズの新作も心待ちにしております。



【編集後記】
まさに「人に歴史あり」。高口さんがギターポップシーンで多くのミュージシャンから信頼されている理由が垣間見えるインタビューになったのではないかと思います。


高口大輔


◆高口大輔 プロフィール:

the Sweet Onionsのメンバー。
キーボード、ドラムなどの楽器を演奏し、アレンジ全般を行う。サポート活動も多数。


philia records
http://philiarecords.com/

philia records Twitter
https://twitter.com/PhiliaRecords

Time is on my side / the Sweet Onions’ Blog
http://sweet-onions.jugem.jp/

♪イベントinformation
philia records presents 「空色メロディ」
詳細は特設ページにて。

■日時
2016年11月20日(日)
12:00 OPEN / 12:20 START
■会場
下北沢mona records
■出演
小林しの / ユメトコスメ / ポプリ / さとうもか / swiss camera
DJ : ウチタカヒデ(web VANDA) お菓子:milky pop.
■チケット
前売り予約:2,500円 当日:2,800円
+1drink or lunch
(中学生以下ドリンク代のみ・未就学児無料 ※要保護者同伴)


<Cheer Up!関連リンク>

高口大輔インタビュー(小林しの『Looking for a key』特集内)
http://www.cheerup777.com/shino2.html




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