美しいメロディーとサウンド、心の深淵を見つめた詞世界、そして唯一無二の歌声で長年にわたり高い評価を受けるシンガーソングライターの青木孝明さん。この秋、4年ぶり8作目のソロアルバム『これから』を発表されました。
Zabadak・小峰公子さんとのコラボレーション作品を含む12曲は何度でも聴きたくなる魅力にあふれ、心に寄り添ってくれる素晴らしいアルバムです。 本インタビューでは、その詞世界はもちろん、美しいサウンドやアレンジ等の制作秘話に迫るなど『これから』をより一層楽しめる記事になっています。
秋の夜長に青木さんの世界にひたりながらぜひお読みいただければと思います。(2026年10月)

---前回に続き篠原太郎さんとの共同プロデュースなのですね。
篠原さんは80年代に、真島昌利さんがVocalのバンドTHE BREAKERSに在籍、現在はTHE BRICK'S TONEでご活躍とのこと。お付き合いは長いのでしょうか。共同プロデューサーに迎えているいきさつについて伺えますか。


青木:そうですね。つきあいは長いです。最初のCDからずっと助けてもらっています。
篠原君にはここのところ、主にミックスをお願いしています。僕にとっては凄く重要な部分なので、共同プロデューサーとクレジットしました。

---今回は2曲がZabadakの小峰公子さんとのコラボレーションで、小峰さんが作詞されています。
青木さんは近年Zabadakに参加されていらっしゃいますね。コラボの経緯は?


青木:Zabadakでのツアー中、新幹線の移動中にお願いしたと思います。ドラムで参加されている楠均さんが横にいらして、それはやったらいいねー、と言ってくださいました。
公子さんの歌詞は凄く好きで、自分も影響を受けていて、いつか共作してみたいと考えていました。

---曲の作り方について、昔と比べて変わってきた点はありますか?

青木:以前は歌詞を作るのに苦労していましたが、最近は苦労しなくなりました。その他は昔と変わらないですね。

---アレンジについては、どのようにされていますか?

青木:アレンジは殆ど一人でやっています。誰かに演奏をお願いする時はフレーズが決まっている時以外は自由にやってもらってます。
バンドでライブをやる時もそう。アルバムではアレンジを自分で細かいところまで決めて演奏するので、ライブで人とやる時は逆に好きにしてもらって自分もそれを楽しんでいます。

---録音について、参加ミュージシャンとはリモートのやりとりが多いのですか?

青木:最近はそうですね。
今回はホーンセクションの録音でスタジオに入った以外はリモートでしたね。

---アルバムの曲順については、じっくり練られるほうでしょうか。

青木:曲順を考えるのは凄く好きで、曲を作るのと同じ位情熱を傾けています。

---ここからは一曲ずつお伺いします。

◆1.New Song
---力強い曲調、そして希望を感じる歌詞。たちまちアルバムの世界に惹きこまれますね!


青木:ありがとうございます。概ね暗い曲が多いので今回はスタートは明るい曲にしたかったのです。

◆2.真夏の日曜日
◆7.夕焼けがきれいだから

---この2曲は小峰公子さん作詞ですね。小峰さんには「こんなイメージで。こんなテーマで」とリクエストされたのですか。それとも完全にお任せでしょうか。

青木:完全にお任せです。そのお蔭でアルバムの世界に広がりが出来たと思っています。

---「真夏の日曜日」はゴキゲンな楽しい曲で、Liveで盛り上がるでしょうね。転調するところがグッときます。

青木:そうですね。結構うまく作れたと思います。

---「夕焼けがきれいだから」は、どこか懐かしさがあり温かい曲ですね。でもよく聴くと喪失の歌でしょうか?切ないです。
中間のギターソロがまた美しくて。どんなギターを使っているのですか。


青木:これは喪失の歌です。ソロはエピフォンのリビエラというギターを弾いています。リードギターを歪ませる時はこのギターを使い、クリーンな音を弾く時やリズムを弾く時はモズライトを使っています。ピックアップの性能で使い分けています。

◆3.叶わなくても
---美しいワルツで、青木さんがすぐそばで歌ってくれているような感覚で聴きました。
年齢を経た人なら共感するような悲しさ・切なさを感じるし、遠くで鳴っているようなトロンボーン、トランペットがまた効果的ですね。


青木:そうですね。歌は勿論ですが、間奏のホーンも凄く気に入っています。
2年前に亡くなった母の事を思って歌っています。勿論、歌詞にあるように、もう会えなくなった人達のことも。

◆4.叫び
---「叶わなくても」同様、やはり悲しさ・切なさを感じます。
さまざまな音色が重なってきて、色彩感がどんどん濃くなるような…美しいサウンドですね。
曲の仕上がりについては、曲を作っている最初のほうから青木さんの頭の中に浮かんでいるのですか?


青木:これも悲しさ・切なさありますね。それだけに1曲目は明るくしたかった(笑)。
アレンジの大まかな部分は曲が出来る時に決まっています。ただ、録音というのはプレイ中も含め、限りなくその曲を何度も聴くので、その時に新たにアイデアが浮かんだら付け加えます。
歌詞もそうですが、自分でここまで作ればもうこれ以上加えることはないんじゃないかと思える境地があって、そこに達したような気持になる時、凄く充実感を覚えます。自分はこの為に生きているとさえ感じます(笑)。

◆5.不条理への情熱
◆9.Parallel
◆12.The End Of The Day
---インストが3曲入っていますね。
「不条理への情熱」はギターの音色が美しく、青木さんのコーラスでしょうか。不思議なふわっとした世界が広がるように感じました。アコーディオンのような音はシンセでしょうか。


青木:僕のコーラスです、ていうか誰かの名前をクレジットしているもの以外は全て自分です。アコーディオンはサンプリングですね。

---「Parallel」はエフェクトが面白い効果を出しているのですね。ギターの音色が美しい。

青木:これは若い頃影響を受けたDurutti Columnへのオマージュですね。

---アルバム最後を飾る「The End Of The Day」は、伊藤隆博さんのトロンボーンと、三浦千明さん(蓮沼執太フィル等でご活躍)のトランペットのデュオが美しくて、優しくまろやかなサウンドに癒されます。ビブラフォン、タンバリンなどのパーカッションが入ってますが打ち込みですか?本物の楽器を使っているように感じました。

青木:タンバリンみたいに自分で出来るものは実際叩いていますが、ビブラフォンやハープシコードは打ち込みです。サンプリングでリアルだと感じる音を使っています。
勿論本物を使いたいですが、サンプリングでかなりいい感じに作れます。ですのでそういう風に感じてもらえると嬉しいです。

---青木さんのインストゥルメンタルも、さまざまな曲想があって素晴らしいですね。インストだけのアルバムを作りたいとか、劇伴をやってみたいなどありますか?

青木:ありがとうございます。インストだけのアルバムはサブスクとCDRのみですが、『Soundtrack For Future Past』というアルバムを20年近く前に作っています。よかったら聴いてみてください。
劇伴やってみたいですね。お仕事いただければ頑張ります。英会話のDVDの音楽は作ったことがあります(これは後に『Soundtrack For Future Past』に入れました)。

◆6.裏切りの記憶
---ギターの弾き語りから始まるこの曲はドラマティックな歌詞で、映像が目に浮かぶようです。
バンドサウンドになるとちょっと力強くなってきますね。篠原太郎さんのコーラスが効果的!


青木:ちょっと人間不信に陥っている歌詞ですね。実際そういう時に作りました。でも今読み返すと政治ドラマのワンシーンみたいにも思えて気に入っています。
篠原君の声は大好きで最近のアルバムでは必ず歌ってもらってます。なんか一緒に歌うとある種の化学反応というか、マジックが働くような気がしています。

---冒頭は「夕焼けがきれいだから」のギターとは違うギターですか?青木さんはどのようにギターを使い分けているのでしょうか。

青木:冒頭のアコースティックギターは「夕焼けがきれいだから」と同じで、マーチンのD-18というギターを弾いています。30年以上使っています。
ギターは色々持ってますが今回は前に書いたエレキ2本、アコースティックギターはD-18とヤマハのガットギターの2本、ベースは殆どフェンダーのフレットレスベースですが1曲だけヤマハのフレット付を使っています。音色と用途で使い分けています。

◆8.Changes
---「変えなくちゃいけない」という歌詞が何度も出てきて印象に残ります。戦争とか現代の様々な問題について歌っているのでしょうね。


青木:そうですね。若者や子供が傷つくのは辛いですね。

◆10.今ここで
---ギターの弾き語り。「Changes」同様、人によって様々に捉えられるような歌詞。個人的なことなのかもと思ったり、社会全体のことなのかなと思ったり…。


青木:これはどちらかというと社会に対する不安かな。でも個人の不安と社会の不安は切り離せませんね。

◆11.これから
---とても心に響くタイトル曲。力強くて希望を感じさせる歌詞。まさにCheer Up!ソングだと思いました。落ち込んだ時や元気を出したい時に、何度も聴きたくなります。


青木:ありがとうございます。落ち込んだ時は是非聴いていただきたい。好きな事だけ考えていれば何とかなるというメッセージです(笑)。

---伊藤隆博さん(KIRINJIのサポートや、ゆずのツアーバンドマスターでご活躍)のピアノがまた素晴らしくて曲を盛り上げてますね。
カホンやタンバリンなどのパーカッションも効果的ですが、青木さんが重ね録りされているのですか。
青木怜さんのコーラスも素敵ですがご親族ですか?


青木:素晴らしい伊藤君の自由演技。こんな風に全く自分では出来ないことをやってくれる人をゲストでは呼びます。今回は呼んでいませんが、西村哲也さんもそうですね。
パーカッションは自分で叩いてますが、サンプラーの音も入っています。
青木怜は息子です。前にはベスト盤の1曲目の「新しい夜明け」でも歌ってもらいました。声が大人になりましたね。

---青木さんの歌声が本当に素敵なのですが、何か喉のケアなどしていらっしゃいますか?歌の練習もしているのでしょうか。何か秘訣があれば伺いたいです。

青木:ありがとうございます。歌はいつももっと上手くなりたいと願っているので、嬉しいです。ケアはしていますが、生々しいので言わないでおきます。
毎日という訳にはいかないのですが、ボイストレーニングはしてます。

---前回のインタビューでは、青木さんのCheer Up!ミュージックについて、Sly & The Family Stoneの「I Want To Take You Higher」をご紹介いただきました。
最近のCheer Up!ミュージックがあれば教えていただけますか?


青木:ミッシェル・ポルナレフの「不信という砂漠の中で」(Le désert n'est plus en Afrique)です。

---読書がお好きだそうですが、最近はどのような本を読まれましたか?

青木:歴史の本が好きです。100年前は勿論、1000年前の事が今の自分に直結しているなんて昔は考えたこともなかったのですが、今はそう思って読んでいます。古くは梅原猛、井沢元彦、最近では森田健司、原田伊織あたりがお気に入りです。
あと最近、世阿弥の風姿花伝の現代語訳を読んだけれど、600年近く前の芸能の作法が現代にも、また違うジャンルにも充分通用することに驚愕しました。
あと昔のプロ野球も好きで野村克也監督の本があるとつい買っちゃいます。

---2027年のご予定・計画や今後の抱負など教えてください。

2027年は折角アルバムも作ったし、まだ行った事のない所で演奏してみたいですね。あと、作りためてきた曲をまとめていきたいです。発表にはまた4年位かかると思いますが。

---どうもありがとうございました。次のアルバムも楽しみにしております。




『これから』青木孝明

1.New Song
2.真夏の日曜日
3.叶わなくても
4.叫び
5.不条理への情熱
6.裏切りの記憶
7.夕焼けがきれいだから
8.Changes
9.Parallel
10.今ここで
11.これから
12.The End Of The Day

発売日:2026年10月14日
レーベル:TOKYO MOR
規格品番:MOR6961
価格:3300円(税込)

作詞/作曲 青木孝明
2、7のみ 作詞 小峰公子 作曲 青木孝明

Produced & Mixed by 篠原太郎、青木孝明
Mastered by 中村宗一郎(Peace Music)
Designed by オオシマカナ(CREATIVEPORTAL)
Recorded at Studio Wednesday 2024年8月〜2026年7月

青木孝明 Vocal,Guitar,Bass Guitar,Percussion,Piano,Keyboards & Programming
Musicians
篠原太郎 Chorus(2,6)
伊藤隆博 Trombone(3,12) Piano(11)
三浦千明 Trumpet(3,12) Flugel Horn(4)
青木怜 Chorus(11)

【作品情報】
青木孝明、4年振り8作目のソロアルバム。Zabadak、小峰公子とのコラボレーションを含む新作全12曲。
心の深淵を見つめた詞世界、メロデイーメーカー、ヴォーカリスト、マルチプレイヤーとして益々磨きをかけた意欲作。
篠原太郎共同プロデュース。





◆青木孝明 プロフィール

1963年4月5日、東京都生まれ。
1980年代中頃より自作曲の宅録やライブハウスでの音楽活動を始める。
1992年、それまでの作品をまとめた自主制作盤“L/C”を発表。
この作品がきっかけとなり、1993年、ムーンライダーズの鈴木博文に認められてメトロトロンレコードよりソロデビュー。
その後30年以上に渡り、計7枚のソロアルバム(今作は8枚目)、2枚のバンド作品を発表した他、ギター、ベース、ボーカルなどでThe Suzuki(鈴木慶一&鈴木博文)、あがた森魚、Zabadak、綿内克幸、青山陽一、若林マリ子などのライブ、レコーディングに参加。
近年ではギター、ボーカルで参加しているZabadakでの活動が活発。

青木孝明 Melody Circle
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◆ニューアルバム「これから」リリースツアー(ワンマン)

●2026/10/24(土)名古屋 御器所 なんや  SOLD
open 18:00 start 19:00 
●2026/10/25(日)大阪 北浜 雲州堂
open 13:00 start 13:30
●2026/11/15(日)吉祥寺ブラック&ブルー
open 12:00 start 12:30
with 篠原太郎、大槻敏彦、伊藤隆博(東京)、西村哲也(名古屋、大阪)

◆ニューアルバム「これから」リリースライブ アコースティックセット
2027/1/11(月、祝)中目黒Fj's
open 17:30 start 18:00
with 伊藤隆博

<Cheer Up!関連リンク>

青木孝明『声』インタビュー(2022年)
http://www.cheerup777.com/2022aoki.html





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