ピアニスト/トランペット奏者としてますます人気の藤井空さんが、この夏ニューアルバム『そらのソロ41』をリリースされました。
前回のインタビューでは空さんの音楽人生についてじっくり伺いました。これまでに様々なジャンルの音楽を楽しみながらどんどん吸収して、自らのオリジナリティを作り上げていかれたんだなということが伝わってきましたが、本作ではさらに深く空さんの世界を味わえると感じます。
筆者は2025年に藤井空さんソロライブ、そして話題のジャズ/フュージョンバンド4GENEXYZのライブを体験しましたが、それぞれのステージで違った魅力を放つ空さんに圧倒され、二回目のインタビューの機会を得た今回は伺ってみたいことが盛りだくさんになってしまいました。空さんのユーモアも滲む記事、ぜひ珈琲を飲みながらごゆっくりとお楽しみください。(2025年10月)

---ニューアルバム『そらのソロ41』を作ることになった経緯を教えて頂けますか?
制作期間はどのぐらいかかったでしょう。レコーディングに関して印象的なエピソードなどあれば教えて頂けますか?


藤井:4GENEXYZに参加しアルバムを出したところ、制作関係でもよいご縁があったのでぜひソロアルバムも、というきっかけでした。作ると決めてからは1年足らずで準備、録音は2日間で順調に進みました。弁当としじみの味噌汁がおいしかったです(笑)。

---トランペットとフリューゲルホルンはどのように使い分けていらっしゃいますか?

藤井:テンポ速めで元気な曲調はトランペット、優しく歌うようなメロディの曲でフリューゲルを使うとより効果的だな、と判断して使い分けることが多いです。
トランペットでもケニー・ドーハムのような、優しくフリューゲルに近いアプローチ、またはその逆も可能です。いや〜奥が深い。

---Liveの時のように2種類の楽器を一緒に演奏して録音した部分もあるのでしょうか。

藤井:2種類以上の楽器を使う場合レコーディングでは同時演奏はなく、全て別録りです。

---ここからは1曲ずつお伺いします。
◆1.La Vigilancia
---軽快なラテンフレーバーの曲でアルバムのスタート。4GENEXYZバージョンでも聴いてみたい曲ですね。


藤井:大所帯のラテンバンドではよく演奏している楽しげな曲です。記憶に残りやすいメロディができたなと思っております。

◆2.Oil charge
---オイルチャージ?空さんは車を運転されるのでしょうか。どんなイメージで作ったか伺いたいです。


藤井:運転苦手なペーパードライバーの私にとってのオイルチャージとは、、
その答えはぜひYouTubeでこの曲のMVをご覧いただけたらと思います!



◆3.れんげ前線
---空さんの曲は五感に訴えてくる曲が多いと感じています。この曲では、れんげの香りを知らないものの、花の香りまで漂ってくるような…。作曲するとき五感を意識なさったりすることはありますか。


藤井:五線紙に向かい、ああでもないこうでもないと考えながら作曲する方なのであまり意識することはなかったのですが、知らず知らずのうちに五感を使っているのかなという気が最近してきたところです。

◆4.六花
---雪の結晶を意味するそうですが、ピアノがキラキラしていて雪が舞っているようにも感じます。癒される美しい曲ですね。


藤井:ありがとうございます。札幌の美しい雪を見たことでイメージができたので、これは五感を使って作った曲と言えるかもしれません。

◆5.トランペット吹きの憂鬱
---トランぺッターの憂鬱って実際どんなことがあるのでしょう。吹きっぱなしだと唇が痛くなるとか?空さんの曲は、4GENEXYZや複数人数のユニットなどいろんな編成で聴いてみたくなるんですよね。


藤井:まさにそういうところで、トランペットは日によってかなり調子の変化が起きやすい楽器です。
もっと進歩したい、等といった思いも込められています。これはコンボ編成でもぜひやってみたい1曲です。

◆6.ハードボイルド
---ミステリアスでメロディがちょっと不穏なピアノソロ曲。意味深なタイトルですが、空さんにとっての「ハードボイルド」のイメージはどんなのかな?と気になりました。


藤井:後ろを向けば銃口をこちらに向けたスーツの男が無表情で立っている、というような危険で不穏な感じをイメージしました(笑)。
この曲は今までやったことのなかった、とある仕掛けがありますので耳を澄ませて聴いていただきたい1曲です。

◆7.Running lizard
---スピーディな鍵盤ハーモニカとピアノがスリリングで、爽快感があって大好きな曲です。
lizardはトカゲ、何かエピソードがあるのでしょうか。


藤井:動きのあるテクニカルな曲を作りたいということでできた曲です。エリマキトカゲやバシリスク、身近なところでは草むらのカナヘビがすばしっこく走る絵が浮かんだのでこのタイトルにしました。
ウチにはヤモリ君が張り付いてることがよくあります(笑)。

◆8.珈琲の香り
---まさにコーヒーを飲みながら聴きたい曲。Bossaのリズムにのって奏でられるメロディーは心安らぎリラックスできます。
4GENEXYZのアルバムにも空さん作曲の「珈琲を淹れながら」が収録されていますし、珈琲がお好きなのかな?と思いました。どんな味の珈琲がお好きですか?好きなカフェなどもあればぜひ教えて頂きたいです。


藤井:実家が喫茶店だったこともあり、コーヒーは中学生から大好きでいつも飲んでいます。
がつんと濃いのが好きですが、深煎りするとカフェインが飛んでしまうと聞いたので最近は浅煎りのものも飲むようにしています。

きれいでオシャレなカフェも好きですが、老舗のタバコの匂いがするくらいの渋いいわゆる喫茶店の方により惹かれる気がします。そういう店でも流れていてほしい曲です。

◆9.ひだまりのメロディ
---まさにひだまりの中にいるような心地になれる、優しい曲。あたたかなメロディーにほっこりと癒されます。空さんにとっての癒しとは?


藤井:リラクゼーションサロンの施術の時に流す曲を、と依頼があったのがきっかけでできた曲です。私もヘッドマッサージやもみほぐしは大好きです。
癒しと言えばやはりウチの文鳥でしょうか。昼間3羽それぞれの小屋の止まり木で昼寝をしている姿なんかはもうたまりません。

◆10.Annoyingly cute
---直訳すると「うっとうしい可愛さ」?ユニークな音色で楽しくなりますね。空さんの音楽を聴いてると、やっぱりジャンルなんて関係ないなと思わされます。


藤井:「ウザかわいい」というニュアンスでしょうか。私のイチ推しのLINEスタンプのキャラ、「ウザ〜〜い猫」のイメージで作りました。なかなかぴったりな曲ができたと思います。
今後ももっといろいろなジャンル、雰囲気の曲を幅広く作っていきたいと思っております。

---気が早いですが、次回作の構想も練っていらっしゃるのですか?
個人的にはカバーアルバムも聴いてみたいなと思っております。


藤井:まだ具体的に内容は決まっていませんが、全編オリジナル「そらのソロ」シリーズはライフワークとしてコンスタントに作り続けていきたいと思っています。
カバーやリーダーバンドでの録音ももちろん夢としてあります。

---前回は空さんのCheer Up!ミュージックとしてファレル・ウィリアムス「Happy」を挙げて頂きましたが、最近のフェイバリットミュージックについてはいかがですか?また、リスナーとして好きなピアニストはいますか?
テクニカルでハイノートを駆使するタイプのトランペッターに憧れていらしたそうですが、好きなトランぺッターも教えて頂ければ!


藤井:仕事で関わったジャンルのものを聴いていくうちに好きになっていくパターンが多いと気づきました。往年のスタンダードから最近の歌までさまざまです。

好きなピアニストはレッド・ガーランド、ウィントン・ケリーといったレジェンドの、とても聴きやすいと言うか「複雑でないけど至高の演奏」に惹かれています。

トランペットはやはりテクニカルなフレディ・ハバード、リー・モーガン、ウィントン・マルサリスなど。あとはクロスオーバーのジャンルのトム・ブラウン(芸人さんではない(笑))、アレン・ヴィズッティなどもとても好きです。

---夏から秋は吹奏楽コンクールが盛り上がる季節ですね。空さんも中学・高校と吹奏楽部だったそうですが、思い出に残っているお好きな吹奏楽曲はありますか?
思い出に残る課題曲も教えて頂けると嬉しいです。


藤井:コンクール自由曲はどれも思い出深いですが特に「第1組曲(ホルスト)」、「シバの女王ベルキス(レスピーギ)」「叙情的祭り(伊藤康英)」は今でも好きです。
課題曲はなんといっても平成10年の「稲穂の波(福島弘和)」です。美しすぎて鳥肌出ます。



---4GENEXYZや、須藤満さん(bass)とのユニット、それにライブ情報を拝見すると様々なコラボやユニットでお忙しそうな空さん。2025年後半のご予定や、今はどんなユニットに参加されているかなど教えて頂けますか?

藤井:須藤満さんとは「Times」(2人の名前が「満」「空」に由来)というコンビでツアーも予定されています。
4GENEXYZも年内数回のライブがあります。
ソロとしては「そらのソロ 41」リリースツアー、そしてなんといっても年末12/21(日)ひらしん平塚文化芸術ホールにて行われるクリスマスコンサートです。その他詳しくは私のオフィシャルサイトにてチェックお願いいたします!

---今年は空さんが出演なさるLiveに2回伺う機会に恵まれ、そのサービス精神と演奏の素晴らしさに驚きました。空さんにとってLiveとは?
また、今後どんなアーティストになりたいと考えていらっしゃいますか?


藤井:ありがとうございます、光栄です!お帰りになるお客様の笑顔でこちらも元気をいただけます。
私にとってLiveとは、「この私がちょっと世のため人のためになれるもの」でしょうか。
確かなスキルを持ち、皆さまに感動を与えられるアーティストになりたいと思っております。

---どうもありがとうございました。今後もさまざまなLiveや音楽活動の展開を楽しみにしております。




『そらのソロ41』藤井空

1.La Vigilancia
2.Oil charge
3.れんげ前線
4.六花
5.トランペット吹きの憂鬱
6.ハードボイルド
7.Running lizard
8.珈琲の香り
9.ひだまりのメロディ
10.Annoyingly cute

発売日:2025年7月30日
レーベル:Airgroove
規格品番:YZAG-1125



◆藤井空 プロフィール

岡山県出身。
ピアノ、トランペット奏者。同時に演奏するスタイルでも話題。
父親の影響で幼少期よりジャズに親しみ、ジャズ、クラシック、歌謡曲など様々なジャンルをマルチに演奏する。エレクトーンでの演奏活動も行う。
2025年7月30日、3rdアルバム「そらのソロ 41」をリリース。
則竹裕之、須藤満率いるインストバンド「4GENEXYZ 」トランペッターとして、2024年に1st アルバム「Sky, River and Friends on the Earth」をリリース。
NHK-BS」にて、郷ひろみ、野口五郎、堺正章、その他トップスターとも共演。 自身のYouTubeチャンネル「藤井空」「藤井空作品庫」「藤井空文鳥小屋」でも精力的に情報を発信している。文鳥愛好家。
シンガーソングライターの藤井風は実弟。

藤井空 Official Web Site
https://solafujii.com/
X(旧Twitter)
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Instagram
https://www.instagram.com/solafujii_information/

藤井空 YouTubeチャンネル
藤井空作品庫(YouTubeチャンネル)
藤井空文鳥小屋(YouTubeチャンネル)

<Cheer Up!関連リンク>
藤井空インタビュー(2024年)
http://www.cheerup777.com/2024fujii.html



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