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ジャパニーズAORシーンで話題の青野りえさんが2ndソロ・アルバム『Rain or Shine』をリリースしました。前作『PASTORAL』(2017年)と同じく鬼才シンガー・ソングライター関美彦さんがプロデュース。青野さんの歌声と素晴らしいサウンドが織りなすそれぞれの曲世界に夢中になること間違いなしの名盤誕生!今回は青野さんに制作エピソードやこれまでの音楽キャリアなど様々なお話を伺いました。(2022年3月)

---『Rain or Shine』を聴かせていただき、青野さんの世界にぐっと惹き込まれました。飽きることなく何度も聴きたくなるアルバムと感じました。
このアルバムを作ることになった経緯について教えて頂けますか。


青野:ありがとうございます。前作の1stアルバム『PASTORAL』を関美彦さんにプロデュースしていただき、素晴らしいメンバーの皆さんとの制作も楽しく思入れのある作品に仕上がりましたので、完成直後から、次も同じチームでまた作りたいと思っていました。
2021年になって予算や心構えの準備が整った時点で私から関さんにお声がけしました。

---制作にあたりコロナ禍で大変な面もあったと思います。制作過程やレコーディングはどのように進みましたか?

青野:関さんの制作方法は、バンド・メンバーが全員集まって、セッションしながらアレンジを固めていくスタイルなのですが、去年の夏頃にメンバーの皆さんにスケジュールを聴いたところ、年内で全員集まれる日が3日間しかありませんでした。
特に伊賀航さん、北山ゆう子さん、山之内俊夫さんはこのコロナ禍でも超売れっ子なので流石だなあと思いました。

そんなわけで余裕を持って制作スタートしたはずなんですが、レコーディングはかなりタイトになってしまいました。
1回のプリプロ・セッションで8曲のアレンジを固め、2日間で8曲のベーシックを録り終えるという無茶振りだったのですが、皆さんが優秀すぎるのでなんとかできてしまいました。残りの2曲は関さんの1人宅録でした。

---作詞は青野さん、作曲やプロデュースは関美彦さんとのこと。作詞と作曲はどちらが先だったのでしょうか?曲順は関さんと話し合って決められたのですか?青野さんからみて、関さんはどのような方でしょう。

青野:全て曲が先です。関さんは普段は物腰柔らかく穏やかですが、音楽に関してはこだわりが強くて頑固な一面もあります。メロディやアイデアが泉のように湧き出てくるみたいで、関さんのその場の思いつきでアレンジもどんどん変わるので、関さんと一緒に音楽を作る人は相当な柔軟性が求められると思います。いつもびっくりするような突拍子もないことを言ったりしますが、最後には必ず最高なものに仕上がるので、やっぱり天才だと思います。
曲順はまずざっくり私が考えて、後半の迷ったところは関さんと相談して決めました。

---どの曲も青野さんの紡ぐことばから映像が見えるようで、物語を感じながら聴かせていただきました。作詞方法はどのようにされていますか?時間はかかるほうでしょうか。また、実体験も混ざっているのか、物語を作るように書かれているのかについて、とても気になりました。

青野:ありがとうございます。聴いた人が映画を見ているような感覚になる歌詞を書きたいと思っているので、そう言っていただけて嬉しいです。
作詞は締め切りのギリギリまでイメージを膨らませて一気に書くことが多いです。締め切りがないといつまでも考えてしまうので時間はかかります。逆に2日で書けと言われたら集中して書いてしまうこともあるので、締め切り次第でしょうか。

歌詞を書くときに意識しているのは、「設定はフィクション、感情はノンフィクション」ということです。ストーリーは想像したり色々ですが、そこに乗せる感情だけは実体験のものでないと歌ったときに気持ちが入らないと思っています。作ったものに感情のエッセンスだけ注入する感じですね。

---アルバムタイトル『Rain or Shine』に込めた思いについて伺えますか?
雨が出てくる歌が多いですよね。


青野:アルバム制作の初期段階で、雨や水をテーマにすることは決めていました。
10曲中、9曲に雨、水、川、涙、といった雨や水に関わる言葉が入っています。本当は全曲入っていたんですが、途中で1曲差し替えになったので9曲です。

『Rain or Shine』は降っても晴れても、どんなときも、という意味です。
この2年を振り返ると、ずっと「待つ」時間だったなあと思います。
雨が止むのを待つように、日常が戻るのを待つ、好きな人に会えるのを待つ。待つのが辛いときもありましたが、会える日をわくわくしながら楽しみに待つ日もありました。雨の日も晴れの日もどちらも愛おしい日々で、そんな日々を慈しみながら、夜明けの希望を描くことを忘れないでいたいという思いを込めました。

---ここからは曲ごとにお伺いします。

◆1. Waiting for you
---洗練されたサウンドが素敵で、一曲目からアルバム世界にすぅっと入り込んでいました。
青野さんの歌声に、たちまち魅了されました。


青野:アルバムの「待つ」というテーマそのままに、コロナ禍の恋愛のもどかしさを歌にしました。でも湿っぽくなくて、軽やかさと、程よく色気のある「待つ」になったらいいなと思いました。
アウトロの山之内さんのギター・ソロが今回のアルバムいちお気に入りです。
ゆう子さんのドラムは元の演奏だけでも充分かっこよかったのですが、ミックスの時に佐藤清喜さんがドラムに少しサンプリングを足してくださって、さらにかっこよくなりました。

◆2. Rain Rain
---サウンドがゴージャス、ギターのカッティング、ベースライン、シンセ、どれもかっこよくて。その中を自在に泳ぐかのような青野さんの歌声。
終わりのほう、サンバ調になるのがまたいいですね!気分アガります。


青野:イントロがTHE BRAND NEW HEAVIESへのオマージュという感じで、90年代初めくらいの懐かしさを感じます。
関さんの作る曲はいつもどこか明るさがあるので、私もつられて明るい歌詞や歌唱になったりします。暗く沈んだ街を1人の女が鼻歌を歌いながら歩いているイメージ。皆んなの気分を明るくしてくれる理想の女神みたいな存在を思い描きました。まだまだ世界的にも不安定な情勢が続いていますが、この曲を聴いた人が少しでも明るい気持ちになったり、元気になったら嬉しいです。

◆3. Blue Moon River
---美しいエレピの音色が印象的なミディアムスローナンバー。作品情報にあった「聴く映画」という言葉がまさにぴったり。


青野:歳を重ねると酸いも甘いも一通り経験して、諦めることもあれば、まだ夢見ていることもある。そんな両方の気持ちに優しく寄り添う曲になったらいいなと思います。

◆4. 九月の水
---可愛らしい雰囲気のジャズワルツ。メロディも美しく、青野さんの描く詞世界と相まってうっとりしました。


青野:この曲の、関さんのリファレンス曲はBill Evansの「愛のテーマ」でした。私はAntonio Carlos Jobimの「薔薇に降る雨」のイメージが浮かびました。
「九月の水」という言葉はずっと前からあたためていて、Jobimの「三月の水」という大好きな曲があるんですけど、ブラジルの三月は夏の終わり、日本でいうと九月なんですよね。涼しくなってちょっと寂しい気持ちです。
メンバーの皆さんの活き活きした演奏もたっぷり聴ける1曲です。

◆5. Rainbow in your eyes
---なめらかで澄んだ歌声と、雨上がりのようなキラキラしたサウンドで心がぱあっと明るくなります。途中でリズムが変わるんですね。最後のほうのカッコよさといったら!


青野:この曲は私にとって一番の難関でした。他の曲に比べて明る過ぎるんじゃないかと最後まで心配で、キーを半音下げればよかったかなと後悔したり、色々気を揉んだ曲です。後半のコーラス・アレンジは、関さんの天才っぷりが存分に発揮されていると思います。プログレッシヴですね。

◆6. エンドロール
---五感を刺激するような曲と感じます。映像が浮かび、良い香りが漂ってくるような…。不安定なメロディが主人公の心情を表しているのかなあ、なんて思いながら聴きました。


青野:この曲はメンバーの皆さんにとってもチャレンジ曲になりました。
伊賀さんもゆう子さんも、「こんなの今まで演奏したことないよ」とおっしゃってました。
このアレンジが今の時代にアリなのか?無しなのか?大丈夫なのか?
爽やかなシティ・ポップが世界的に人気の今、この曲がどんな風に受け止められるのか、皆さんの反応にとても興味があります。
私は80年代の角川映画でこれからデビューする女優さんのような心持ちで歌ってみました。歌詞も少し歌謡曲を意識したかもしれません。大人っぽい曲を歌ううぶな少女のイメージです。

◆7. 雨に唄えば
---同タイトルの映画を思い出しましたが、こちらはスローテンポでゆったりした曲ですね。
リラックスしたような、寂しいような…街にとけこむヒロインが見えるかのようです。


青野:関さんはこの曲のミックスの時に、江口寿史さんの『わたせの国のねじ式』のイメージとおっしゃっていました。少しシュールな世界観でしょうか。おかげでセンチメンタルな歌詞ですが、暗くなりすぎず、程よい明るさがあります。

◆8. ラストシーン
---なんだか切ないメロディーと歌詞。かなりキュンときますね。一本短編映画が作れそうな。このアルバムに出てくるヒロインは同じ人なのか、それとも違う人なのか?とふと考えてしまいました。


青野:同じ人物の1番は現在、2番と3番が回想というイメージです。
中学生くらいの頃、男子に自転車の後ろに乗せてもらう時、恥ずかしくてシャツの裾だけ掴んでましたね。青春って尊いですね。

◆9. 片影
---伴奏はギターとベースのみのシンプルなサウンド。シンプルゆえに青野さんの歌声が際立ち、ひたすら聴き入ってしまいます。


青野:この曲はアルバム制作の終盤になって、関さんが「新曲できたよ」とのことで、聴かせてもらったらすごく良い曲だったので、急遽差し替える事になりました。部屋でラジカセで録ったみたいなイメージです。関さんと私、それぞれ自宅で録音してデータのやり取りのみで、コロナ禍らしい空気感のある1曲になったと思います。
今後、ピアノ・ヴァージョンやバンド・アレンジ・ヴァージョンなど色々展開が楽しめると思います。

◆10. 夜明けのダンス
---メロウなサウンド。青野さんの声はとても耳に心地良くてリラックスできます。
またアルバムの最初から聴きたくなります。


青野:悲しみをしっかり味わった後に訪れる美しい夜明け。
アルバムの最後にこの曲を聴いて、明るい夜明けを、希望の気配を感じてもらえたらいいなと思います。


---せっかくの機会なので、ここからは青野さんご自身のことについてもお伺いできればと思います。
まず、歌を好きになった時期や、歌手になろうと決められたのはいつ頃か?など教えて頂けますか?


青野:子供の頃から歌うのが好きで、学校の休み時間や放課後に教室でよく歌っていました。学園祭の舞台など機会があれば出て歌っていたと思います。高校の時は合唱部で部長をやっていました。
本格的に音楽活動を始めたのは上京して、大学の音楽サークルに入ってからです。当時、OBにミュージシャンを多く輩出している早稲田大学のバンド・サークルで活躍するのがデビューへの近道だと本気で思っていたので、その頃からプロを目指してオーディションなどもたくさん受けました。
サークルの先輩に色々音楽を教えてもらって、学生時代にたくさん音楽を聴いて今に繋がっていると思います。

---学生時代などによく聴いたアーティストやジャンルはいかがですか?

青野:学生時代に色々聴いた結果、70年代のシンガー・ソングライターもの、ソフト・ロックやAORに辿り着きました。キャロル・キング、トッド・ラングレン、日本だと、ティン・パン・アレーと荒井由実、大貫妙子、吉田美奈子、あたりは自分の音楽の指針みたいになりました。

---プロになったいきさつについて伺えますか?

青野:学生時代にオーディションをたくさん受けたりしながら、少しずつ人脈が増えてお仕事に繋がっていった感じです。
参加していたゴスペル・グループ「VOJA(The Voices of Japan)」がメジャー・デビューしたのも大きなきっかけでした。

---青野さんはヴォイストレーナーもなさっているとのこと。おすすめの喉のケア方法を教えていただけますか?

青野:とにかく乾燥しないように、保湿ですね。こまめな水分補給と、はちみつ、プロポリスののど飴は常備してます。

---好きな本や映画、最近ハマっていることについて教えて頂けますか?

青野:この半年はアルバム制作に専念していたので、本や映画を観る余裕はなかったです。アルバムのジャケットのデザインも自分で担当しているんですが、それが一番ハマっていたことですね。

---このWEBマガジンでは、ご登場下さる方の「Cheer Up!ミュージック」を伺っております。
青野さんのCheer Up!ミュージックについてはいかがですか?


青野:Leave the Door Open/Silk Sonic
この曲のMVも大好きで、ブルーノ・マーズが歌ってる時の多幸感は、元気が出ます。



---今後の夢、2022年の予定など教えて頂けますか?

青野:3月26日(土)に神保町 試聴室でアルバムのレコ発ライヴがありまして、今はそれを成功させるべく準備をしています。
目下の夢は、自分のラジオ番組を持つことです。

---どうもありがとうございました。青野さんがパーソナリティのラジオ番組、そして次作以降も楽しみにしております。











『Rain or Shine』青野りえ

1. Waiting for you
2. Rain Rain
3. Blue Moon River
4. 九月の水
5. Rainbow in your eyes
6. エンドロール
7. 雨に唄えば
8. ラストシーン
9. 片影
10. 夜明けのダンス

レーベル:FLY HIGH RECORDS
発売日:2022年3月16日
規格品番:VSCF-1776(FRCD-071)

プロデュース:関美彦

作詞:青野りえ 作曲:関美彦

編曲:関美彦 with EASY PIECES

青野りえ(Vo. Cho.)
伊賀航(B.)
北山ゆう子(Dr. Per.)
山之内俊夫(G.)
長谷泰宏(ユメトコスメ)(Pf.)

ミックス&マスタリング:佐藤清喜 (microstar) at catchball studio

録音:笹倉慎介(studio 土の上を歩く)
   吉田仁郎(じろうゆスタジオ)

写真:吉田将史
デザイン:青野りえ

【作品情報】
令和のジャパニーズAORシーンをひた走る歌姫、青野りえの2ndソロ・アルバムが遂に完成!ジャパニーズAOR/シティ・ポップ・ファンの間で話題となった前作アルバム『PASTORAL』(2017年リリース/ヴィヴィド・サウンド VSCD-3197)と同じく、鬼才シンガー・ソングライター関美彦がプロデュース。本作のレコーディングにはベース:伊賀航(細野晴臣、星野源等)、ドラムス:北山ゆう子(堀込泰行、キセル等)、ギター:山之内俊夫(花澤香菜、ROUND TABLE等)、ピアノ:長谷泰宏(ユメトコスメ)という名プレーヤーを迎え、ミックス/マスタリングは良質なポップスを多数手掛ける佐藤清喜(microstar)が担当。青野りえの変幻自在なヴォーカルと、めくるめくサウンドスケープはまさに「聴く映画」だ!
青野りえにとって本作は、FLY HIGH RECORDSからの初のリリース作品となるが、これまで同レーベルのThe Bookmarcs(近藤健太郎・洞澤徹)とコラボし、2021年には配信限定でソロ・シングル「Never Can Say Goodbye」(洞澤徹:作曲・編曲・プロデュース/本作には未収録)をリリースし、この曲は「令和のジャパニーズAOR」として好評価を得た。またThe Bookmarcsのアルバム『BOOKMARC SEASON』(2021年リリース/VSCF-1775)には「君の気配(duet with 青野りえ)」で参加するなど、さらに活動の幅を広げている。本作はこれらによって彼女の歌声を知ったリスナーにも十二分にアピールできる、充実のフル・アルバムだ。現在進行形のジャパニーズAOR/シティ・ポップの名盤が、ここに完成した。




◆青野りえ プロフィール
都会的なメロウ感と、無垢な透明感を併せ持つ歌声のシンガー。富山県出身。
1996年、亀渕友香率いるゴスペル・グループ"VOJA"のメンバーとしてデビュー。
沖井礼二(TWEEDEES/ex.Cymbals)のソロ・プロジェクト "FROG" にゲスト・ヴォーカルとして参加。またコナミ「pop'n music」「beatmania」等のゲーム音楽での歌唱や、資生堂、ユニクロの CMナレーション等、様々なレコーディング、ライヴ、TV、CM で活動している。
2017 年、関美彦プロデュースのもと、伊賀航、北山ゆう子、井上薫(ブルー・ペパーズ)ら参加の 1st ソロ・アルバム『PASTORAL』(VIVID SOUND)をリリース。
ジャパニーズ・シティ・ポップ/ AOR ファンの間で話題となった。
2021年10月、The Bookmarcsの洞澤徹が作曲・編曲・プロデュースを手がけた「Never Can Say Goodbye」を配信リリースし、好評価を得る。
そして 2022年3 月、待望の2ndソロ・アルバム『Rain or Shine』を FLY HIGH RECORDS からリリース。

青野りえ Official Website
https://aonorie.com/

●青のラジオ(Radiotalk)
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●青野りえオフィシャルTwitter
https://twitter.com/rie_aono
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●YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCsyQCI0Ecvg2D7PItoASRYw
●FLY HIGH RECORDSオフィシャル・サイト
https://flyhighrecords.hatenablog.com/
●ヴィヴィド・サウンド・オフィシャル・サイト
https://www.vividsound.co.jp/




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