電子オルガンという楽器にどのようなイメージをお持ちでしょうか。最近の電子オルガンはシンセサイザーのような音色作り、打鍵のタッチコントロールによる演奏表現の豊かさ、自動演奏機能の向上とますます面白い楽器になっています。そんな中、自動演奏機能は使わずドラムとのデュオで、何度も聴きたくなる癒しのアルバムを作ったのが鈴木奈美さんのユニット『landscape』。先入観なしに曲の楽しさ、温かさに触れてみて頂きたいアルバムです。今回は鈴木奈美さんにこのアルバムや曲にまつわるエピソードについてじっくりお伺いしました。(2021年2月)

---ファーストアルバムを出そうということになったきっかけや経緯について教えていただけますか?

鈴木:2019年5月中旬にライブをしたのが最後でして、その2週間後に最愛の愛犬が16歳で旅立ち、人生で初めての悲しみから立ち上がることが中々難しく…
人前で演奏、MCをする気力も自信もなく…
秋になり心も少しずつ落ち着き、でもまだライブをするエネルギーが湧かないので、CD制作をしてみようと11月からレコーディングに入りました。

---そのようないきさつだったのですね。電子オルガンソロではなく、ドラムと一緒にユニットを組んだ経緯は?

鈴木:それまではピアノでバンド活動をしていたのですが、電子オルガンが組み立てられて持ち運びができる楽器になっていたことで、もう一度弾いてみようかなぁ、と思いました。
一人で成り立つ楽器ですが、自動演奏機能を使用せず、全て自分で演奏してバンドアンサンブルを愉しみたいと思いました。

---ドラムの平川象士さんとの出会いのきっかけや、お人柄についてご紹介お願いいたします。

鈴木:電子オルガンのユニットをスタートするにあたり、やりたい音楽性からミュージシャン仲間に平川氏を紹介してもらいました。
初めは物静かな人と思っていましたが、慣れてきたら面白い人です(笑)。一言で言うならばジェダイマスターですね。
書いたオリジナル曲に、何の説明をしなくても私の頭に描くサウンド以上にしていただき有り難いです。

---landscapeというユニット名にこめた想いはいかがですか?

鈴木:風景が見えるような、色彩豊かな楽曲創りと演奏がしていけるといいなぁと思っています。

---アルバムの制作過程で苦労したこと、嬉しかったことなどエピソードがあったら教えていただけますか?

鈴木:電子オルガンでの録音も人生初なら、ジャケットのデザイナーさん探し、CDプレス会社さん探しなど全てが初めて尽くしでテンパリましたが、完成品が送られてきたときは感動しました。

---ここからは一曲ずつお伺いします。
1.strawberry shock
---かっこいい曲でテンション上がりました!電子オルガンを習っている人は自分でも弾いてみたくなると思います。後半のドラムもすごい。電子オルガンソロではなくドラムとのデュオならではの迫力ですね。

鈴木:いいメロディが全然出てこない…さぁ、困った…どうしよう…と鍵盤の前で数日悩み(曲を創るときはピアノでして)、何かヒントがないかなぁとこれは大喜利のような感覚(笑)で創りました。

---この曲はストロベリー=苺にちなんで1-5、つまり5度の音程を使って作曲したとライナーノーツで知りました。鈴木さんの作曲方法はどのようにされているのですか?

鈴木:ああでもない、こうでもないと1曲創るのに五線にメモをしたものだらけになります。
いつも2、3ヶ月に一度行っていたライブに必ず新曲を用意するようにしていたので、毎回プレッシャーでしたがそれがとてもいい勉強になっています。

2.散歩道
---やさしさが感じられるハートウォーミングな曲。音色が美しく、途中のエレピの音色が特にきれいで癒されました。
愛犬との散歩がテーマだそうですが、どんなワンちゃんでしたか?


鈴木:パピヨンの男の子です。人間の気持ちをかなり理解できているのかな?と思うくらい、私には本当にいいパートナーでした。毎朝の散歩で四季を感じ、早起きの健康的な生活にしてくれて。
散歩途中の信号待ちでサビのメロディが出てきた曲です。

3.a ray of light
---美しいアルペジオで始まるドラマティックな曲ですね。
電子オルガンは自身で様々な音色や機能を工夫して、ベースも自身で演奏するところも魅力の一つだと思います。鈴木さんは作曲している時に音色も同時に思い浮かぶのでしょうか?


鈴木:そうですね。音色は本物の楽器としてのイメージが創っているときからはありますね。
できる範囲で近い音色を創るようにはしていますが、中々難しいです。というかシンセサイザーの中身の知識がまだまだ乏しいので、想う音色にならないのでしょうけれど…
これからの目標のひとつでもあります。

4.阿蘇のうた
---お祖母様の故郷、阿蘇をテーマにされたそうですが、温かいだけじゃなく力強さとか凛とした美しさも感じました。このアルバムの中でも特に好きな曲です。お祖母様のお人柄とか阿蘇のエピソードなど教えていただけますか?

鈴木:私が関西から上京するまでは、阿蘇から出てきた祖父、祖母と一緒に暮らしていました。
一昨年、亡くなって49日に阿蘇の高齢な親族に父とご挨拶に行き、6歳ぶりだった阿蘇を少し観光しました。
そんな帰りの飛行機の離陸でサビが出てきた曲です。
両親が共働きでしたから、祖父母に育てられていたようなもので、母から聞いた話に「洋服の似合うきれいなスタイルを作るのに正座をさせない」と大正モダンを感じるお世話をしてくれたようでした。
残念ながら「きれいなスタイル」にはなれずでしたが(汗)。

5.ココ(KOKO)
---手話で人間とコミュニケーションをとることの出来たゴリラのKOKOについて、ライナーノーツで初めて知りました。この曲には優しさと共に哀しみも感じさせられました。どんな想いで作曲されましたか?

鈴木:KOKOについてはネットニュースで初めて知り、大切にしていた仔猫の「死」を数日後に理解して号泣する姿がなんとも言えず悲しく、辛く。
辛く悲しい気持ちの人や動物の心のお邪魔にならないように、寄り添える人間でありたいと思い創りました。

6.夜明け前
---お祖父様との思い出が曲になったそうですが、お祖父様はどんな方だったのですか?
しみじみした曲調に鈴木さんとお祖父様との様々な想い出が感じられました。


鈴木:厳しくも優しい祖父で、プライドも高く…。
葬儀の祭壇に、晩年にデイサービスで書いた習字の作品が沢山置いてあり、父が慌てて『一番上手な作品を一番上に置かないと親父に怒られる!』とハナマルの『夜明け前』が。
亡くなる数日前に最後とわかってか、痩せて細々とした手からは信じられない力で、強く握手をしてくれたことは忘れられませんね。

7.origami
---和の音色が印象的な曲ですね。力強さを感じたかと思うと、しっとりしていたり、折り紙だけではない、日本女性のたおやかさとか、日本自体の底力のようなものを感じました。
鈴木さんご自身、折り紙を折ったり、日本文化で大事にされているものがあったりされますか?


鈴木:折り紙は久しく折っていないですね(笑)。ただ段々オトナ年齢を重ねる度にお着物に興味が出てきたこと、スイーツも自然と和の方へ、昔に比べれば和食党に…完全加齢ですね(笑)。
東京開催のオリンピックを楽しみにと、日本人、日本文化の素晴らしさを表現したく創りました。

8.孫悟空のリング
---ラテン調の楽しい曲でアルバムの締めくくりですね。
このアルバム全体、タイトルが印象的ですが、曲のイメージとタイトルは一緒に浮かぶほうでしょうか?あとからタイトルをつけることも多いのですか?


鈴木:大抵はタイトルからのイメージで曲を創っています。
この曲はタイトルが後でした。
確か曲ができてスタジオでリハをしていて、平川氏に「こういうリズムってなんていうの?」と尋ねたところ「ソンゴ風…ですかねぇ」と言われたのが「そんごくう?!」と聞こえ、曲の構成など相当頭を痛めて完成させたことから、孫悟空の頭の締まる輪で、このタイトルになりました。

---ここからは鈴木さんの音楽キャリアについてお伺いします。
何歳から楽器を始めたのですか?


鈴木:4歳半から電子オルガンを始め、高校(音楽科)でピアノをスタートさせました。

---学生時代など、よく聴いていたアーティストやジャンルはいかがですか?

鈴木:YMO、坂本龍一、矢野顕子、パットメセニーグループなどジャズ・フュージョン系アーティストです。

---音楽のお仕事について、ライブ活動以外にはどんなお仕事を普段なさっているのか伺えますか?

鈴木:学生卒業後から現在もピアノ曲集のアレンジをさせていただいています。
都内でポピュラーピアノ講師もしています。

---音楽以外で最近ハマっていることは?

鈴木:8年ほど前から、加圧トレーニングや筋トレを始めていましたが、昨年春の緊急事態宣言で3ヶ月ほどの自宅トレーニングではまんまとコロナ太りに。
7月から再開して以前以上の身体になり、トレーニングが楽しいです。
音楽よりも結果が早いからですかね(汗)。

---このWEBマガジンの恒例の質問です。
鈴木さんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?


鈴木:子どもの頃に死ぬほど聴いた『異邦人』でしょうか。
イントロが始まった瞬間から心奪われました。音楽にハマるきっかけだったように思います。

---今後の夢や展望について伺えますか?

鈴木:まずはしばらくできていないライブをやりたいですね。
オリジナル曲もどんどん書いていきたいですし、アレンジもたくさんしていきたいし、演奏もしていきたいし…
音楽に欲張りであることを今後も続けていきたいです。

---どうもありがとうございました!ぜひlandscapeのセカンドアルバムを聴きたいですね。今後の新曲も楽しみにしております。




『landscape』landscape

1.strawberry shock
2.散歩道
3.a ray of light
4.阿蘇のうた
5.ココ(KOKO)
6.夜明け前
7.origami
8.孫悟空のリング

発売日:2020年6月2日
規格品番:LASC-0001

鈴木奈美:YAMAHA Electone STAGEA ELC-02
平川象士:YAMAHA drums , zildjian cymbal

Composed by Nami Suzuki
Arranged bu landscape

作品サイト
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=414861
配信リンク
https://linkco.re/zDS5Bgtq?lang=ja






◆landscape プロフィール
『landscape』 エレクトーン鈴木奈美とドラム平川象士の2人ユニット。 エレクトーンの自動演奏機能を使わずに演奏することをモットーとしています。2016年より都内で活動開始。 ポップ、プログレ風、ラテン風など色彩豊かなオリジナル曲を創り上げています。2020年春、ユニット名と同じファースト・アルバム『landscape』を完成。



◆鈴木奈美 プロフィール
すずきなみ 滋賀県大津市生まれ。4歳よりエレクトーンを始め、県立石山高校音楽科入学と共にピアノと打楽器を始める。卒業後ヤマハ音楽院エレクトーン科入学と同時にジャズピアノ、音楽理論等を藤井英一氏に師事。音楽院卒業後はゲーム音楽のアレンジ、キーボーディストとしてアーティストのサポート演奏活動など。並行して、月刊ピアノをはじめとするヤマハ・ミュージック・メディアからピアノアレンジ曲集を多数出版。アレンジ、採譜をした曲数は4000曲を超える。



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